アトランタのヒップホップシーンから登場した、最も影響力のあるラッパーの一人である Young Thug(ヤング・サグ/本名 Jeffery Williams)含む、YSL Records 所属のラッパー28名が、今週月曜、組織的犯罪への関与の疑いで逮捕されたと The New York Times が報じている。

Young Thug は、10年以上のキャリアを通じてラップシーンを再構築し、3枚のアルバムがビルボードチャートにて1位となり、Hip Hopシーンのみならず様々なジャンルのアーティストたちとのコラボレーションでも知られているラップスターだ。
 

彼の逮捕は、2021年1月にフルトン郡初の黒人女性地方検事となった Fani Willis が、アトランタを暴力から解放された都市とするため、ストリートギャングを取り締まると公約したことに端を発している。なお、Fani Willis は、ドナルド元大統領と彼の派閥によるジョージア州での不正選挙疑惑の調査を行ったことでも知られている民主党員である。

Fani Willis の事務所のスポークスマンは、月曜の夜、Young Thug が彼の自宅にて 逮捕されたことを発表しており、ネット上には逮捕劇の瞬間を捉えた映像が流れている。
 
起訴状は、Young Thug が2012年にアトランタで発足し、全国的に活動するギャング「Blood(ブラッズ)」と連携する犯罪ストリートギャング「Young Slime Life(ヤング・スライム・ライフ)」の創設者であると主張している。
Young Thug のレーベルは「YSL Records」「Young Stoner Life Records」と呼ばれており、このレーベルに所属するアーティストは「Young Slime Life」のメンバー「Slime Family」の一員であると言及されている。



起訴状で指名された28名の全員が、犯罪組織メンバーに対して最も頻繁に使用されている RICO 法(威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法)に違反した罪で起訴されている。

Fani Willis と他のジョージア州当局者は最近、アトランタにおけるギャングについて敬称を鳴らしており、最近の公開会議では、アトランタのギャングについて「公安に対する最大の脅威」と呼んでいる。火曜の記者会見では、ギャングが「我々がコミュニティ内で目にする全ての暴力犯罪の75〜80%を保守的に犯している」と述べており、またアトランタは他のストリートギャングに対するより多くの同様の起訴を「絶対に」すべきである、とも述べている。

この逮捕劇は、他の大都市の議員や法執行当局が全国的な暴力犯罪の急増の封じ込めに力を注ぐ中、Hip Hop アーティストと彼らの犯罪活動への関係性についてが懸念される中で起きており、市民的自由至上主義者や Hip Hop ファンからのこれに対する反発は、1980年台後半〜1990年代初頭に起きた、ギャングスタラップでの明らかに暴力的な歌詞が論争を巻き起こしたことを反映している。

Hip Hop カルチャーを研究するリッチモンド大学のリベラルアーツ教授の Erik Nielson は「それは仕事を成し遂げていない当局にとって、便利なスケープゴートである」と述べている。

しかし、88ページに及ぶ月曜日の起訴状によると、ギャングが目撃者の脅迫、殺人、殺人未遂、カージャック、強盗、窃盗、麻薬取引など、様々な犯罪行為に関与したと主張している。2015年、Jimmy Winfrey という YSL メンバーによってツアーバスが襲撃されたニューオリンズの Hip Hop スター、Lil Wayne(リル・ウェイン)を含む多くの人々が銃撃の被害者であるとしている。
 
Young Thug はグループの犯罪陰謀を増長する「明白な行為」として説明されている多くの違法行為を犯したとされており、それらの主張の中には、ショッピングモールで男性を殺すと脅迫したり、メタンフェタミンを配布する目的で所持したりといった例が挙げられている。

また Young Thug は、2015年にライバルのギャングリーダーである Donovan Thomas Jr. の殺害に使用されたシルバーのインフィニティQ50セダンを借りたと言われている。この Donovan Thomas Jr. の死に関しては五人の男性が殺人罪で起訴されており、そのうちの一人は YSL 所属のラッパー Yak Gotti(ヤク・ゴッティ/本名 Deamonte Kendrick)であると言われている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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Young Thug の弁護士は、YSL はストリートギャングではなく、「彼(Young Thug)は何の犯罪も犯していない」と述べている。

また、起訴状では、有名ラッパー Gunna(ガンナ/本名 Sergio Kitchens)も一味の一人であると述べており、販売目的であることを知りながら盗品や麻薬を受け取ったことを含む重罪を犯したとされている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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2021年4月、Fani Willis は、やはり有名ラッパーの YFN Lucci(YFN ルッチ/本名 Rayshawn Bennett)を含む、YSL との血生臭い抗争中にあると言われるギャングのメンバー12名を起訴している。YFN Lucci は「ドライブ・バイ・シューティング」と呼ばれる通り過ぎざまに車から被害者に向けて発砲するという犯罪の重罪謀殺の罪で起訴されているが、月曜日の起訴状では、YSL メンバーの三人が、2月に YFN Lucci を刑務所内にて刺したとして、殺人未遂で起訴されている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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また、YSL の一員であるラッパーの Big Bhris(ビッグ・ブリス)は、2月にアトランタの警察官に6度発砲して射殺したとして告発されている。

Fani Willis はは4月の記者会見で以下のように述べている。

私はあなたがラッパーであるという事実に感銘を受けていない。ーそれはあなたがデフォルトで起訴されるのを妨げることにはならない。

彼らが暴力行為を犯し、それを立証するのに十分な証拠があれば、起訴状が出るだろう。

新たな起訴状やその他の法定記録では、フルトン郡の検察官がアトランタのラッパーやその仲間の音楽や SNS に細心の注意を払い、それらのコンテンツを使用してライバルの両ギャンググループに所属する多くの容疑者に対する刑事事件を強化していることを示している。

起訴状では、ライバルのギャンググループのリーダーである Donovan Thomas Jr. が殺害された後、Young Thug が「(一部の人々が)自分と YSL から殺された」と罵倒するビデオを投稿していたとしており、また、2018年の別のビデオでは「俺は誰も殺したことはないが、その体とは関係がある」と述べていたとのことだ。

アトランタ警察によると、4月23日までの殺人件数は昨年の比較対象期間よりも60%も増加しているとのことで、その数字の上昇に対する不安は、共和党主導の州議会と共和党知事の Brian Kemp に、一連の反犯罪法案の制定を促しており、またアトランタの新たな民主党の市長 Andre Dickens と Fani Willis にとって最も差し迫った政治的課題となっているとのことだ。