ニューヨークに本部を置くアメリカの非営利通信社 AP通信によると、パキスタンは、世界トップのお茶輸入国の一つであり、富裕層〜貧困層に至るまで、パキスタンの二億2,000万人の国民は1日に少なくとも3杯のお茶を飲むと考えられており、お茶は非常に人気のある飲み物であるとのことだ。また、政府はこの国民たちのお茶への欲求を満たすべく、毎年中央銀行の外貨準備金から6億ドル(約803億4450万円)をお茶の輸入に費やしているとのことだ。
 
そんなパキスタンでは、4月にイムラン・カーン前首相が議会での不信任決議で追放された後、シャバズ・シャリフ首相が行政を引き継ぎ、深刻化する経済危機の中、政府の財政を圧迫する一因となっている "お茶の輸入" の削減を提案。
今週火曜の記者会見で、アーサン・イクバル計画大臣が国民に対し「お茶を輸入するためにも(国は)借金をしているため、お茶を1日1〜2杯減らすように人々に呼び掛けている」と発言した。

それに対して、お茶好きの国民たち猛反発。SNS 上では大臣に対して「辞任しろ」という声も出たという。
イスラマバード郊外の道端でお茶屋さんを経営するディル・シャー氏は、AP通信に対して以下のように発言している。

「昨日、アーサン・イクバルはわたしたちにお茶の消費量を減らすように頼んだ、そして明日、彼らは食べる量を減らすようにと言うかもしれない。それは解決策なのだろうか?」

パキスタン政府はこれまでに、燃料、天然ガス、電気の価格を最大45%引き上げており、それが食料価格の高騰にも繋がっている。
先週、シャリフ政権は最初の予算を議会に提出して承認を得て、IMF の要求に応じてエネルギーと燃料への補助金を廃止、富裕層に対する更なる税金を課すことを決定した。

また、シャリフ政権は過去三週間でガソリン価格をこれまでより24ルピー(約41円)引き上げ、1リットルあたり約234ルピー(約401円)とすることを発表。4月にイムラン・カーン前首相が議会から追放された際には、ガソリンは1リットルあたり約150ルピーで入手可能できていたとのことなので、約64%の値上げ率となっている。

イムラン・カーン前首相は、シャバズ・シャリフ現首相が「米国の陰謀の下で権力を握った」と主張しているが、ワシントンはこれを否定。シャリフ首相とパキスタン軍もイムラン・カーン前首相の主張を否定しており、米国の陰謀の証拠は入手できなかったと述べている。しかし、パキスタン全土では数時間にも及ぶ停電も起きており、シャリフ連立政権の人気はガタ落ちであるとのことだ。


ただし、イムラン・カーン前首相の政権時代にも、党の議員であるリアズ・ファティアナ議員が、パキスタン国内で砂糖が不足する中で「砂糖の使用量を減らし、食事の際にはフラットブレッド(ロティ。多くのパキスタン国民の主食)は1つだけを食べるように」と人々に呼び掛け、大批判を喰らっていたとのことなので、この呼びかけは "日本での政府からの電力使用削減のお願い" のような感じで、パキスタンでは割と良くあることなのかもしれない……。