イギリス・ウェールズ政府が納税者の税金を使ってフェスティバル開催のために購入した農場に、準絶滅危惧種指定で保護対象となっている野鳥 “Osprey(ミサゴ)” が営巣を始めていることが判明し、同地でのフェスティバル開催は白紙となり、使用できなくなった土地の価値が暴落してしまったとのことだ。

ウェールズ政府は、ウェールズのクリックホーウェルで毎年開催されていた音楽、コメディ、パフォーマンスアート等が体験できる野外フェスティバル「Green Man festival」のための用地として、ポーウィス州にあるギルストーン農場を購入した。なお、 同フェスは2025年は8月14〜17日に開催が予定されており、ヘッドライナーとして UNDERWORLD、WET LEG、TV ON THE RADIO がラインナップされている。


しかし、この会場予定地に2024 年初頭、2羽のミサゴの営巣が確認された。ミサゴは、ウェールズでは非常に希少な野鳥で、CNN によると、保護団体の報告では繁殖期のつがいは同国内で約300組しか確認されておらず、その中でウェールズではわずか数組であるとのことで、そのためミサゴの成鳥と卵はイギリスの法律で保護されていて、違反すると6ヶ月以下の禁固刑や5,000ポンド(約76万円)の罰金刑となるとのことだ。

そのため、このニュースを耳にした当時の経済大臣 Vaughan Gething 大臣は「(ミサゴの営巣を)大変喜ばしく思っている」と述べたが、一方でこの発見により「Green Man festival」の背後にいる実業家がこの新たな用地でフェスティバルを開催することは不可能となってしまった。ミサゴの発見後、巣の周囲750メートルは立ち入り禁止区域として指定され、巣の様子はインターネットでライブ中継されている。

▼現在もライブ中継中

同地でのフェスティバルの開催が白紙となってしまったため、当初465万ポンド(約9億2,389万円)で購入された農場の価値は、50万ポンド (約9,935万円) も価値が下がり、約415万ポンド(約8億2,456万円)になってしまった。

当初、同フェスティバルはクリックホーウェルで開催予定となっていたが「Green Man festival」のディレクターである Fiona Stewart 氏が設立した企業が、クリックホーウェルを別のイベントに利用したいと考えていた。
そのため、「Green Man festival」を支援するウェールズ政府は、事業計画もないままギルストーン農場を購入してしまい、野党議員たちはこれを批判。
以前の監査報告書では "年度末までに未使用資金を使い切ることが、この土地をウェールズ政府が購入した「最も重要な」要因だった" と指摘されていた。

ウェールズ議会の会計・運営委員会の Sened 氏は、批判的な報告書の中で、この決定は「徹底した適正評価手続きが欠如」しており「確実さに欠けており、地域社会への効果的な伝達も行われていなかった」と述べている。


また、ウェールズ政府担当者との会議記録は適切に保管されていなかったため、Sened 氏は「ウェールズ政府の決定を十分に精査・評価することができなかった」と付け加えた。
また、報告書によると「ウェールズ政府の意思決定者には、購入に関する情報が "タイムリーに" 報告されていなかった」とのことだ。

委員会は、政府がこの土地を「性急に」購入したことで「土地に関する提案、ひいては土地の価値に影響を与える可能性のある」野生生物の存在に伴うリスクを特定する能力が阻害された可能性もあると指摘。

報告書は「この土地は現在375万ポンドと評価されており、ウェールズ政府の資産は50万ポンドの価値を失ったため、これは特に注目すべきことだ」と述べている。

委員会のマーク・イシャーウッド委員長は以下のように述べている。

ミサゴがこの土地に飛来したことは予想外のことだった。ウェールズ政府は、購入当時、他の保護種が生息していたという証拠があったにもかかわらず、ミサゴの生息地を保護するためにこの開発に前向きに対応してきたことは承知している。

しかしながら、この土地の将来は今や非常に不透明だ。最新の評価額では、資産価値が購入価格と比較して50万ポンド下落していることが示されている。これは非常に遺憾だ。

委員会は購入プロセスの徹底的な見直しを求め、ウェールズ政府の最高公務員であるアンドリュー・グッドオール事務次官に対し「土地の価値の大幅な下落と、これを軽減できた可能性について検討する」ように求めた。