1981年にアメリカで開局した24時間音楽番組で、ミュージックビデオ、最新のヒットチャートやライブ映像、オリジナルのエンターテインメント番組などを提供するアメリカ発のケーブルテレビチャンネルで、現在は世界的な音楽・エンターテインメントのブランドとして日本を含む160カ国以上で視聴されている MTV だが、親会社である Paramount Global(パラマウント・グローバル)が、MTV のイギリス国内向け放送の5つのチャンネルを終了することを決定した。これは、MTV のグローバル資産から5億ドル(755億7,275万円)以上を削減することを目標とした、より広範なコスト削減策の一環となる。

今回放送終了となる5つのチャンネルは、MTV Music、MTV 80's、MTV 90's、Club MTV、MTV Live だ。英国における主力チャンネルである MTV HD は、引き続き放送されるが、2011年以降、同チャンネルはリアリティ番組に軸足を移しており、ミュージックビデオの放送は一切ないため、実施的に音楽配信チャンネルはなくなることになる。MTV はこれまで、イギリスの若者文化を40年近くに渡って形作ってきた。

イギリスにおける MTV の音楽チャンネルは、1980年代初期の MTV 放送開始以来、音楽をライフスタイルに浸透させ、アーティストを文化的な力へと変貌させていきた。しかし YouTube や TikTok が登場し、ミュージックビデオがゴールデンタイムの TV 放送から携帯端末で視聴するものへと移行した、即時性の強い現代社会において、TV 放送は時代遅れにしてしまった。以前は MTV のミュージックビデオで新たな音楽を発見していたイギリスの音楽ファンたちは、現在ではアルゴリズムによってオススメされる個人個人の趣味趣向に沿った音楽を発見している。ミュージックビデオのプレミア上映は、今やどのテレビ番組よりも、アーティストのソーシャルメディアで公開されることが多いのだ。

しかし、これは MTV というブランド自体の訃報ではなく、Paramount Global は MTV がイギリスで MTV HD とそのデジタルチャンネルを通じて引き続き事業を展開し、リアリティ番組や VMA のような世界的なイベントに重点を置くことを明確にした。
なお、現時点では本国アメリカその他展開中の他国における MTV の今後の動向は不明である。