事の大きな発端は、国際的なハードテクノシーンで最大級のブッキングエージェンシーの一つであり、数多くのアーティストを擁する Steer Management の元パートナー/ブッキングエージェントを名乗るアカウント @bradnolimit 氏による投稿だ。彼は、自身がなぜ同社を去ったのかを明かしており、その理由としてアーティストや関係者の悪行を暴露している。
@bradnolimit 氏は、ハードテクノ界の不祥事を「Steer Files」と称し、被害者や告発者からの証言等のスクリーンショットも投稿している。俺の Steer Files(エスプタイン・ファイルを絡めたジョーク?)を公開する時が来た。
俺は2025年8月、精神状態、価値観、そして個人的な信条が完全に悪化したため、Steerと袂を分かち合うことを意識的に決意した。しかし、ニコラス(元パートナー)と Shlømo が EDSEA※(俺はこのショーで Shlømo(クソ野郎)に3万5千ドル(約545万円)を支払った)に出演し、俺の名誉を傷つけようとしていたことに気づいた。彼らは、俺が「不気味な行動」で解雇されたと多くの人に言いふらしていた。
※Insomniac 社主催の EDC による船上フェス
今まで出会った中で最も不気味な2人に「不気味」呼ばわりされるなんて、本当に最悪だ。
俺には数え切れないほどの秘密があるのに。
俺を知っている人なら誰でも知っているだろうが、俺は親切で愛情深く、誠実な人間だ。1000件ものブッキングに血と汗と涙を流し、Steer の報酬予想を完全に破り、2年間すべてのパーティーが失敗に終わり、謝罪しなければならなかった。
だから、俺は静かに去るつもりはない。いや、平和的に逝くつもりはない。
これで、俺の敵になることがどういうことか、君は十分に理解できるだろう。今や僕が君のトップアーティストの年収を合わせたよりも多くの収入を得ていることを考えると、これは●楽しいはずだ。
それに加え、Reddit や各 SNS 上では、実際に被害を受けたという女性たちによる告発も加わり、今現在カオスな状態となっている。
なお、@bradnolimit 氏による告発で名指しで非難されているのが、Shlømo(シュロモ)、CARV(カーヴ)、Basswell(ベースウェル)、Fantasm(ファンタズム)だ。
フランス・パリを拠点に活動する DJ/プロデューサーの Shlømo は、未成年女性をグルーミングしたり、薬物や飲酒が絡んだ状況で同意なしに性行為に及んだとされている。
これに対し、Shlømo は 自身の Instagram のストーリーでこれらの疑惑を否定し、虚偽の情報に基づく「中傷キャンペーン」の被害者であると述べており、同時に疑惑に対する法的措置に専念するため、一時的に公の場から身を引くと発表した。
しかし一方で、@bradnolimit 氏等が投稿した過去のトークショー動画内では、グルーピー(取り巻きの女性)にバックステージで女性蔑視的な品のない扱いをしたことをユーモラスにコメントしており、さらなる批判を集めている。
ドイツ出身の覆面DJ/プロデューサー CARV は、ツアー中やアフターパーティーにて性的暴行や身体的暴力を女性に加えたり、17歳の未成年女性に対して自身の男性器の写真を DM で送ったとされており、さらに Basswell もセクシャルハラスメントを女性に対して行なっているとされている。友だちの DJ が、他の男にフェラしたばかりの子とヤってるって言ってたんだ。
最悪だったよ、本当に最悪だった。
今思い出した。
一晩中、そのことで彼をからかってた。
しかも最悪だったのは、彼女のお父さんもそこにいたってこと。
彼女は完全に酔っ払ってた。
しかも彼女のお父さんはバックステージにいた。
そうそう。
今思い出した。
クソッ。
大笑いしたよ。
また、アメリカ出身、フランス拠点のDJ/プロデューサー Fantasm は、暴行が原因で拠点とするフランスやベルギーでの公演をキャンセルされたと噂されているが、ベルギーの大手メディア Belga は2025年、Fantasm が自身の居住地であるフランス・リヨンにて性的暴行を行った疑惑により、ベルギー開催の大規模音楽フェス「Dour festival」やオランダのナイトクラブ「The Kompass」のリニューアルオープンイベントへの出演をキャンセルされていることを報道している。
@bradnolimit 氏の告発の他にも、Reddit では ドイツ発の DJ/プロデューサー の Hades(ハデス)や、ベルギーの DJ/プロデューサー The Dark Horror(ザ・ダーク・ホラー)に関しても言及されている。
Hades は性感染症を患っておりそれを知っていたにもかかわらず、複数の女性たちと関係を持ち、性感染症について女性たちに知らせなかったとされている。
The Dark Horror は、合意なしで男性器の画像やマスターベーションをしている自身の動画を送られたと複数人の男女の被害者が主張しており、またアーティストとしての地位を利用し “性的捕食者” のような振る舞いをした、女性に対して不適切で強引な接触をした、相手が飼っているいる犬を食べると言って脅した、殺害予告をされた、性差別的、同性愛嫌悪的な発言をされた等の被害報告の噂が多数流れており、結果として「Decibel」「Defqon」等のフェスティバルは The Dark Horror の出演をキャンセルしたものの、音楽ファンによると、The Dark Horror は既に複数のイベントやフェスティバルに再びブッキングされていると報告されている。
こういったオンライン上での騒動を受けて、Steer Management は最近、ウェブサイトからすべてのアーティスト名を削除し、以下の声明を発表。
数時間にわたり、当社および業界内の他のエージェンシーが現在代理している一部のアーティストに関する重大な疑惑が公に流布されています。
これらの疑惑は、極めて深刻に受け止めております。
当社は、個人の絶対的な尊重、誠実さ、責任、そして常にプロフェッショナルとしての厳格さという基本原則を掲げております。チーム全員がこの事態に深く心を痛めております。
申し立てられた内容について、徹底的な調査を開始いたしました。事実関係が判明し、確認された場合は、直ちに措置を講じます。
必要に応じて、法的措置を含むあらゆる必要な措置を講じます。また、関係者の皆様には、全面的な協力、配慮、そして支援を徹底してまいります。
しかしながら、当社が代理するアーティストが公に問われている状況において、沈黙を守ることはできません。法の支配が支配する国家において、重大な問題の調査は管轄当局の責任であり、法的、対立的、かつ敬意ある枠組みの中で行われなければなりません。公正かつ冷静な状況下で真実が明らかにされるよう、責任と自制を求めます。
事実関係に関する最新情報と、当初の決定について、できるだけ早くご説明いたします。
また、複数のフェスティバルが問題のアーティストたちをラインナップから削除。「Open Beatz Festival」「LASTER」「Unreal x worldclubdome」等のフェスティバルや、Club Ost 開催イベント「Devoted」は、ラインナップからこれらのアーティストをキャンセルし、さらにオランダ拠点のハードテクノイベント「Verknipt」は今後 Shlømo、CARV、Basswell をブッキングしないと発表。設立以来、当エージェンシーは一つの指針を掲げてきました。それは、信頼するアーティストを代理し、彼らのプロジェクトを厳格に、責任を持って、献身的に支援することです。
しかしながら、疑惑が拡大し、所属アーティストにも影響が出ている現状において、何もせずにいるという選択肢はありません。
その結果、関係アーティストとのコラボレーションを一時停止することを決定しました。
勇気を持って声を上げてくださった皆様に、私たちはささやかな連帯を表明したいと思います。私たちは皆様の声を信じ、耳を傾け、行動します。
私たちは裁判所でも捜査機関でもありませんが、現在、事態の深刻さに鑑み、必要な判断力をもって、ご指摘いただいた内容を徹底的に精査しています。
新たな事実関係が明らかになった時点で、改めてご連絡いたします。
また、Alt8music、Fenrick、Afem Syko、Luca Agnelli といった数多くのアーティストが、Steer Management とのコラボレーションの終了を発表している。
しかしこういった告発の一方で、音楽ファンの間からは @bradnolimit 氏に対する「やり過ぎ」「なぜ今まで放置していて今になって急に言い出したのか。以前は被告らと共に金を稼ぐ側だったからだ」等の批判も出ている。
また他の音楽ファンからは「事件を起こしたアーティストが一旦キャンセルされても、またしばらくしてほとぼりが冷めた頃にフェスに出てくるアーティストは多い。そういったことがないようにして欲しい」という声も挙がっており、性加害等を犯したアーティストに対して業界が甘すぎるという批判も噴出している。
次から次へと出てくる、性暴力事件を筆頭とするハードテクノシーンのスキャンダルの嵐は当分続きそうだ。











