Warner Music Group(ワーナー・ミュージック・グループ/WMG)と米国各地のインディペンデントレコードショップが共同で、不要になったり破損したビニールレコードを消費者から回収する試験的プログラムを開始した。このプログラムは2026年6月下旬〜9月末まで実施されるもので、参加店舗を回収拠点として、アーティスト、レーベル、盤の状態を問わず受け付けている。回収されたレコードはリサイクル技術企業「Virterras Materials」に引き渡され、素材として再利用できるかどうかが検証される。

同プログラムには、ロサンゼルスの Amoeba Hollywood、オースティンの Antone's Record Shop、テキサス・ケラーにある Country Line Records、アトランタの Criminal Records、シアトルの Easy Street Records、ワシントンD.C. の Home Rule Records、テキサス・マッキニーの Red Zeppelin Records、ニューヨークの Rough Trade NYC、ペンシルバニア州イーストンの Spin Me Round、シカゴの Reckless Records、マイアミの Sweat Records が参加する。いずれも、主要な音楽市場として位置づけられている店舗が選ばれており、多様なコミュニティやファン層にこの不要レコード回収プログラムに参加してもらうことが意図されているとのことだ。
 
このプログラムは、WMG が2026年5月に発表した製造実証実験の続編にあたる。5月のこの実証実験では、ヨーロッパ・チェコ共和国に拠点を置く、世界最大の規模を誇るレコード製造企業の GZ Media と イギリスのロンドンにある世界的に有名な録音スタジオの Abbey Road Studios との共同実験で、未販売・廃棄在庫レコードを粉砕して新しいレコードに再プレスすることが音質を損なわずに可能であることが実証された。この実験が「プレコンシューマー廃棄物(販売前の未使用在庫や製造スクラップ)」を対象としていたのに対し、今回は「ポストコンシューマー廃棄物(消費者がすでに購入・使用したレコード)」を対象とした、一歩踏み込んだ取り組みとなる。
5月の製造実験では、10,000枚の未販売レコードを粉砕し、リサイクル素材10〜100%で構成した新しいレコードを製造。Abbey Road Studios でのブラインドテストにより、商業リリースに適した音質を維持できることが確認されている。

回収素材の処理を担う Virterras Materials の傘下企業 VMB Micro は、2026年2月18日に Vinyl Institute が運営する「VIABILITY Recycling Grant Program」から10万ドルの助成金を獲得。米国初となる消費者向けビニールレコード回収インフラを独自の「MicroShear™技術(マイクロシア技術)」で構築することが評価された。今回の WMG との試験的プログラムは、この VIABILITY 助成金プログラムのサポートも受けている。

この試験的プログラムでは、参加率・回収素材の品質・輸送と処理に必要な作業量・回収後の素材の用途可能性という4つの要素を評価する。最終的にレコードが何になるのかは現時点では確定しておらず、あくまで「回収・リサイクルの実現可能性を探る探索的フェーズ」として位置付けられている。

WMG の ESG シニアディレクター、Madeleine Smith は以下のようにコメントしている。

インディペンデントレコードショップは長年にわたり、音楽ファンの集いの場であり音楽文化の守り手だった。この試験的プログラムは、小売業者・回収パートナー・音楽ファンを一堂に集めて重要な問いを探る——不再生・破損したビニールを実際に回収するためには何が必要なのか? これは何が可能かを理解するための重要な最初の一歩だ。

Virterras Materials 社の Jo-Anne Perkins も声明で以下のように述べた。

Warner Music と全米のインディペンデントレコードショップとともに、売れないレコードや再生不能なレコードに新たな目的を与える消費者向け回収プログラムを立ち上げられることを誇りに思う。共に価値ある素材を埋立地から守り、音楽産業のよりサステナブルな未来を創る。

米国のビニール売上は2025年に前年比9.3%増の10億4,000万ドル(約1,560億円)に達し、ユニット数も7.9%増の4,680万枚を記録。これは RIAA によると米国でのビニール19年連続の成長であり、世界のビニール収益の約半分を米国が生み出している。IFPI の「Global Music Report 2026」によると、フィジカル全体でも2025年に前年比8.0%成長したとのことだ。

急成長するビニール市場に対し、不要・破損レコードの廃棄に関する業界全体での取り組みは長らく後手に回ってきた。今回の試験的プログラムはその空白を埋める試みだが、最終的に何が可能かの答えは秋以降に出ることになる。