STANDARD WORKS CO. LTD. presents =B.O.B. (Blessings On Blessings) vol.1=
SUPER NOVA KAWASAKI / Kanagawa, Japan
- Day Event
客電がゆっくりと落ち、やけのはらのDJがSEのレッドボーン「Come And Get Your Love」に切り替わる。映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)のタイトルバックに使用されて、一躍人気が復活した曲だ。レッドボーンはメキシコ系アメリカ人バンドで、70年代前半に活躍した。
レッドボーン(redbone)という言葉は彼らのバンド名としてよりも、いまではチャイルディッシュ・ガンビーノのヒット曲としても知られているだろう。語源としてはいい意味じゃない。「赤い骨」とは「白人じゃない肌を持つ者」を指す隠語として白人たちの間で差別的に使われていた言葉だからだ。だが、彼らは、その言葉を自分たちに流れる「譲れない魂」、つまり不屈の象徴として使った。
その「譲れない魂」は「思い出野郎Aチーム」とも重なり合う部分があるのかもしれない。「Come And Get Your Love」のSEに乗って登場した8人のメンバーを見て、ふとそんなことを思った。今年はそんな1年だったよね。
そして、印象深いキーボードの音色が響く。「同じ夜を鳴らす」だ。
2019年12月7日土曜日、〈思い出野郎Aチーム presents ウルトラソウルピクニック “Share the Light” リリースツアー〉の最終日。今年1月から全国各地で毎月のように繰り広げてきた〈ウルトラソウルピクニック〉は1年間をかけた長い長いツアーみたいな取り組みだった。
いつもと同じように始まる今夜が、いつもと同じようにかけがえののない夜になりますように。そんな願いにも似た街場のゴスペルが鳴り響く。
マコイチこと高橋一が思いのたけを溢れ出させるように歌い出す、ラップとも独白ともつかない言葉。やり場のない思い、引き裂かれそうな心、ごまかし笑いのままではいられそうもない日々。じっさい、もはや「いつもと同じように」なんて、たわごとでしかないって現実を突きつけられているのにね。それでもリフレインされる「同じ夜を鳴らす」が、みっともないほど真摯でバカ正直で、いつも胸が熱くなってしまう。
「同じ夜を鳴らす」。
それはクラブのスピーカーからメロウなソウルナンバーが爆音で流れ、暗闇のなかで酔客たちが無心に踊る光景。
「同じ夜を鳴らす」。
それとも、練習後にもう一杯だけ公園で飲んでいたい夜に、彼女や奥さんからのメールが鳴った着信音。
「同じ夜を鳴らす」。
夜更けの道を歩いて帰る足取りと、スマホからシャッフルで聞こえてきた音楽がシンクロしたように思える瞬間、少し歩みがグルーヴィーになったときの靴音。
「同じ夜を鳴らす」。
誰かを傷つけてしまったことの気まずさに打ちのめされそうになりながら飲んだあの夜のグラスの音。
そうしたかったこと、そうすべきこと、そうするしかなかったこと、そしていまやっていること、そんな生活のすべてもまた、だれかと同じ夜を鳴らしている。
その音はライヴハウスだけのものじゃないし、特別に選ばれた人間たちだけが鳴らす音じゃない。思い出野郎Aチームが音楽で言い続けているのはそういうことだろう。
今年の初め、渋谷のTSUTAYA O-nestで見た〈ウルトラソウルピクニック#1〉で、「まだ完全に仕上がってない新曲」として「繋がったミュージック」が披露された。おそるおそるな感じだったけど、結果的にその曲が、サード・アルバム『Share The Light』までの道のりを「繋げる」曲にもなった。
この夜(リキッドルーム)のツアー・ファイナル、1st Setの彼らはMCも控えめ。「ウェザーニュースが外れた日」からの「周回遅れのダンスホール」「無許可のパーティー」「フラットなフロア」と曲をシームレスに繋げた構成では、彼らの本気が場を圧倒した。不遇時代も週2回の練習を欠かさなかったというエピソードは彼らの下支えにはなっていたものだが、やはり人前に立って、毎月のイベントを責任持って音楽で引き締めていくという意欲が演奏という肉体をたくましくした部分は大きいと感じた。
この夜も、インターミッションでは酒をどんどん飲んでくれと、思い出野郎のワンマンではもはや定例になりつつある二部構成。2nd Setは「楽しく暮らそう」「アホな友達」「夜のすべて」と名曲でたたみかける。
もちろん、名曲がフロアに開放されると、場は沸騰する。しかし、この夜、マコイチはこう言った。釘をさすためじゃない。それは踊り続けるために言っておかなくちゃいけないことだった。
9月22日、入場無料のイベントとして行われた〈ウルトラ”フリー”ソウルピクニック〉で起きたこと。お笑いとソウル・ミュージックが共存した理想の1日になったはずだったのに、彼らに突きつけられたのは「差別を容認するのか」という炎上だった。
ニュースもうわさも過ぎ去るのが早いいまどきには、もしかしたらもう「そんなこともあったね」と記憶の向こうに追いやられつつあった話題なのかもしれない。だけど彼らはそれを忘れずにいることが自分たちのすべきことだとステージではっきり語った。
マコイチはたしか「本当は思い出野郎Aチームでは全曲『アホな友達』みたいな曲ばかり歌ってたい」とも言った。うろ覚えなので正確ではないかもしれないけど、彼はこんなふうに続けた。
いまこの世界や日本社会で起きていることを目にしたら、そんな歌を歌い続けることは難しい。だから、「アホな友達」みたいな曲をもっとたくさん作れるような世の中にしていかなきゃいけない、みたいなこと。
最高じゃないか。すべての「アホな友達」がアホなままでいられますように。そんな笑い話みたいな願いが、「同じ夜を鳴らす」に「繋がったミュージック」して、ちょっとだけ他人の気持ちを思いやり、ちょっとだけ人の背中を押し、ちょっとだけ自分も前に踏み出す手助けになる。そして、きっと「今夜、ダンスには間に合う」のなら。きっとその先の明日があるのなら。
アンコールが「去った!」で終わり、やけのはらが繋いだのはRCサクセションの「ラプソディー」だった。ステージを去っていく8人の背中に、「バンドマン、歌ってよ」と清志郎の声が爆音で鳴り響いた。酒飲みで、だらしくなく、生活力のない、だけどいい歌を歌う昔気質のバンドマン(=アホな友達)。そんなのもう過去の幻想のなかにしかいないって思ってたけど、思い出野郎Aチームは、もしかしたらその最後のしずくを繋いでるバンドなのかもしれない。
移動する車のなかで、練習後にたむろするコンビニの前で、高層ビルに囲まれた暗い公園で、缶ビールを片手にいい歳こいた男どもが語り合う今日のこと、昔のこと、この先のこと。その瞬間に祝福を。バカ話とおなじベクトルで、願わくば世界を一歩前に。
今夜の彼らには、それができたかも。そんなふうに思えた恵比寿の夜だった。ちょっとした奇跡の夜だったよ。
テキスト/松永良平
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