今や世界的人気を誇る、紅一点ヴォーカルSyd tha Kyd(シド・ザ・キッド)率いる米ロサンゼルス出身のメロウ・ソウル・バンド、The Internet(ジ・インターネット)が約2年ぶりとなる単独来日公演を果たした。

2015年にリリースした3rdアルバム『エゴ・デス』が第58回グラミー賞で優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞にノミネートされて以来、世界的に人気の火が付いたジ・インターネットは積極的にワールド・ツアーを行い、各地で熱狂的なファンに迎え入れられる中、ここ日本でも2016年1月に初の単独来日公演は見事なソールド・アウト。勢いそのままに同年のフジロック・フェスティバルに出演し、圧巻のパフォーマンスを披露したのも記憶に新しい。

昨年はシドが初のソロ・アルバム『フィン』をリリースしたのを始め、各メンバーが各々ソロ・プロジェクトを積極的に行いつつ、迎えた2018年、再びバンドとして再始動。

来日公演に先駆けて日本限定のデジタル・ベスト・アルバム『ジ・インターネット-ジャパン・ヒッツ・コレクション』が発売され、公演チケット即完売するなど、来日前から異様なまでの興奮と期待感が高まる中、迎えたライブ当日は大勢のファンが詰めかけ、バンドは新旧の楽曲を織り交ぜつつ、飛躍的な成長を見せつけた圧巻のライヴ・パフォーマンスを披露した。そんな大熱狂のライヴ・レポートが公開となった。

●「ゲット・アウェイ」ミュージック・ビデオ


<The Internet: 来日公演ライヴ・レポート>

2018年1月25日(木)
TSUTAYA O-EAST

日本列島が記録的な寒波に見舞われた中で行われた、ジ・インターネット3度目の来日公演。 “ギャビー”からスタートしたのも意外だったが、バンドの配置が独特だった。キーボードのマット・マーシャンズ、ギターのスティーヴ・レイシー、ベースのパトリック・ペイジ・セカンドがほぼ横並び。
ドラムのクリストファー・スミスこそ少し下がっていたけれど、顔がばっちり見える位置だ。そのゆるやかな線の前を、ヴォーカルのシドが浮遊するように動く。

今回の アジアとオセアニアを回るツアーは、個々のソロ活動を経て、バンドとしての4作目をドロップする前のタイミングで組まれたため、セットリストも『エゴ・デス』などからの曲が半分、ソロ作からの曲が半分という構成。自分の曲で前に出やすいための横並びにしていたわけ。

3曲目でスティーヴくんの“Thangs” と“Ryd”を投入。弱冠19歳の天才トラックメーカーで、張り切って歌う姿が好ましい。ほかのメンバーが歌う間、シドは傍でコーラスをつけたり、にこやかに立っていたり。何かとお騒がせなオッド・フーチャー一派に属しているけれど、ジ・インターネットの面々は穏やかでクールな雰囲気だ。



ベッドルームとスタジオで作り込まれた重層的な音を、ドラムマシーンに頼らず再現できるのは、屋台骨を支えるドラムのクリスが凄腕だから。
レゲエのダブを取り入れた曲での切り替えも見事だった。そして、何よりも高音なのに芯があり、でも柔らかに響くシドのヴォーカルの心地よさ。
ブランディ〜アリーヤの流れをくむウィスパー・ヴォイス唱法を完成させていて、 “ジャスト・セイン”のコーラスで “you fxxcked up”と、かなりキツイ言葉をみんなに叫ばせても下品にならない珍しい人だ。

実は、一派に属するフランク・オーシャンがR&Bシンガーとしてほぼ初めてバイ・セクシュアルをカミングアウトしたあと、シドも続いた。ソロ作『フィン』は女性目線のまま、恋人を「ガールフレンド」と歌っている点でも歴史的な作品なのだが、それも瑣末なことだと思えるほど、シンガーとして素晴らしく、ひとりの人間としてチャーミング。センシュアルに歌い上げた“ボディ”が個人的にハイライトだった。
今回のステージでそれぞれの魅力もよくわかった夜だった。ああ、次のアルバムが待ちきれない。
(文: 池城美菜子 Minako Ikeshiro)

【リリース情報】
ジ・インターネット|The Internet
最新アルバム
エゴ・デス|Ego Death』
発売中
●国内盤CD
2,200円+税
SICP- 4508
日本盤ボーナス・トラック 2曲収録 歌詞・対訳・解説付き
●配信
日本限定デジタル・ベスト・アルバム
『ジ・インターネット-ジャパン・ヒッツ・コレクション』
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【プロフィール】

●ジ・インターネットはシンガー/プロデューサー/DJのシド・ザ・キッド(Syd Tha Kid)と、スーパー3(Super3)名義での活動などでも知られるプロデューサー/イラストレーターのマット・マーシャン(Matt Martian)の二人を中心としたソウル・R&Bバンド。

●幼少期から作詞作曲を行ってきたシドは、15歳の時にレコーディングのノウハウを学び、その後レコーディングエンジニア/プロデューサーとして数多くのオッド・フューチャー作品を手掛けた。シドは当時アトランタに住んでいたマットとMyspaceを通じて2008年に知り合い、3年後の2011年にマットをLAに呼び寄せジ・インターネットを結成

●同年にデビュー・アルバム『パープル・ネイキッド・レディース』をリリースし、その洗練されたメロウ・ソウル・サウンドとシドの妖艶な歌声で全世界を魅了。2012にリリースした2ndアルバム『フィール・グッド』では更にバンド・サウンドを全面に押し出し、唯一無二のオリジナリティーを確立。特にネプチューンズのチャド・ヒューゴをプロデューサーに迎え制作されたシングル”ドンチャ”は大ヒットとなり、更なる人気と評価を高めた。

●2015年に3rdアルバム『エゴ・デス』をリリース。第58回グラミー賞優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞にノミネートされたのをはじめ、各方面でその年のベストアルバムにあげられるなど世界中で大旋風を巻き起こし、若手No.1ソウル・R&Bバンドとして地位を確立。2016年1月には満を持しての初来日を果たし、チケットが即完するなど、大熱狂のファンに迎え入れられる。同年には早くもフジロック・フェスティヴァルのホワイト・ステージに登場し、圧巻のライヴ・パフォーマンスを披露。日本での人気を決定づけた。

●2017年に入り、シドが初のソロ・アルバム『フィン』をリリースしたのを始め、各メンバーが各々ソロ・プロジェクトを積極的に行う。迎えた2018年、再びバンドとして再始動し、単独としては2回目の来日ツアーを果たした。又、来日公演に先駆けて、日本限定のデジタル・ベスト・アルバム『ジ・インターネット-ジャパン・ヒッツ・コレクション』が発売された。