パンデミック宣言されてから早や3ヶ月。マスク着用、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスが世界的に現代の当たり前の様になりつつある世の中、もちろんそういった対策がウイルス拡散を減少させるためには非常に重要であるのと同時に、その措置が人々に心理的影響も与えることを認識することも重要である。

衛星テレビ局 ALJAZEERA によると「社会的な規制が厳しくなるにつれ、人間にとって重要な関係性である社会的繋がりを強制的に失わざるを得ない状況となり、それは人々に大きな心理的影響を与える」と英国 NHS の精神科の専門医たちが警告しているという。


だが「社会的隔離」と「孤独」は別物だ。

「社会的隔離」とは、他者との身体的・物理的な隔離であり、逆に「孤独」は、1人であること、誰かと引き離されていることに対して苦悩を感じている状況を示す。更に言えば、例え人と一緒にいたとしても「孤独」を感じることもあり得る。また、逆に1人でいても「孤独」を感じないこともある。

だが「孤独」とは、ただの感情だけの問題だけでなく、体の中から他人を探してしまう生物学的警告​でもある、とのことだ。人と人との繋がりは、生きていくうえで非常に大切で、自分自身の体もそれを知っているそうだ。


新型コロナウイルスにより、社会的隔離を余儀なくさたり、社会的距離を取らざるを得ない状況となったため、「孤独」を感じる人が増えている。
もちろん、新型コロナ以前からも、特に孤独は人々の健康状態に紐付いているとされてきたが、人々が「孤独」を感じると様々な症状が現れるようだ。

その "悪夢"、不安やストレスのサイン?

新型コロナウイルスにより、人々は意識的にも無意識的にもストレスを感じている。その結果、悪夢を見たり熟睡できず、不眠に陥っているとの報告もあるそうだ。だが、これは際立って珍しいことではないようで、研究によると、不安やストレスを抱えている人は悪夢を見るリスクが高まるとのことだ。精神的外傷や悲しい出来事が起こった際にも同様で、悪夢を見たり睡眠障害が起こる。

 

孤独が精神に及ぼすダメージとは

高齢者は社会的隔離の間、特に傷つきやすい。研究では、高齢者の社会的隔離と孤独は、身体的・精神的に共に様々なダメージを与える高いリスクがあるという。認知の低下、アルツハイマー、そして死を早ませてしまう可能性すらあるとのことだ。

それは何も高齢者だけではない。アメリカやヨーロッパなど、ハグや頬にキスする挨拶といった習慣のある国々では、現在そういった習慣ができなくなっているため、重要な人間関係の一つである「触れ合い」を失っている。日本でも握手の機会などが減っているため「触れ合い」を失っていると言えるだろう。人と人が触れ合うと、ホルモンが体内で放出される。そのホルモンは、母親と乳児の間では大きな絆となっているものであり、認知、性的興奮、信頼、不安にも関与している可能性があるとのことだ。また一部の研究では、このホルモンが放出される機会が少ない人ほど、ストレスや不安のレベルが高くなるという結果があるそうだ。

また、社会的隔離の間、一般的に懸念している事は精神的なコンディション、つまり抗うつや不安障害などである。The European Public Health Alliance は「孤独を感じることや、社会的隔離は、深刻な健康上の影響を及ぼす可能性がある。更には、仕事に行くことや他の人々との交流が制限されている状態は、精神面の問題を引き起こし、健康な人も持病があって健康維持に努めている人も、更に精神的な健康が奪われる可能性がある」と報告している。
 

少しでも異常を感じたら……ためらわずに医療機関へ相談を

例えば、毎日会社や学校へ行く、子供を保育園や学校へ連れて行く、ジムへ行く、といったように、人々は毎日のルーティンに頼って生きている。しかし、こういった日常のルーティンが奪われ、社会的隔離を強制されたり、新型コロナウイルスに感染するのではないかという恐怖に駆られることから、精神的にダメージを受ける可能性は非常に高い。


この記事の筆者でもある、Dr Amir Khan 「患者から精神的な不安があると電話が鳴る頻度が高くなった。そういった際にはためらわず病院へ電話し、直接お医者さんと話すことが大切だ。そしてこのパンデミックの状況から精神的な悩みのダメージを受ける2次被害を防ぎたい。そのためにも少しでも精神的に異常を感じたら、すぐに医療従事者へ相談して欲しい」と締めくくっている。