ABC News によると、オーストラリア出身の大人気ロック・バンド「Cold Chisel(コールド・チゼル)」「Crowded House(クラウデッド・ハウス)」などのツアー・マネージャーを務め、約20年にも渡って音楽業界で働いてきた Sean Richards(ショーン・リチャード)氏は、昨年からのパンデミックによる収入減により、自身のキャリアから退く必要があると気付いたという。

昨年3月にライブが全て中止・延期とな、Sean Richards 氏は全ての仕事と収入源を1夜にして失くした。週に100時間働いていたのに、1夜にして0時間となった。だが生きるために働かなくてはならないため、友人から紹介してもらった日雇いの交通整備の仕事で働き始めたという。彼のそれまでの音楽業界での経歴とは全く掛け離れた業界で、彼の得意とするものを活かせない場所で働かざるを得なくなってしまったのだ。

▼ Sean Richards 氏(Photo: Christabel Blackman)

ビクトリア州音楽開発局を代表して RMIT 大学が行なった最新の調査によると、Sean Richards 氏だけではなく、多くの音楽業界従事者が失業しているとのことだ。「Understanding challenges to the Victorian Music Industry during COVID-19」の報告書は、パンデミックが音楽業界と音楽業界に携わる労働者にどれだけの損害を出したのかを報告している。調査対象となった292人のうち、58%が音楽業界からの完全撤退を検討していると回答した。

この報告書の筆頭著者である Catherine Strong 博士は以下のように語っている

こんなに多くの音楽関係者が完全撤退を考えているとは想像していませんでした。

パンデミック以前のオーストラリア・メルボルンは、世界でも最も名高い音楽の都市だった。パンデミックの影響により計り知れないダメージを受けています。才能を持ったミュージシャンや音楽業界の人々を失うことは、大きな損失となります。また、調査はパンデミックが所得保障、差別、エリート主義など、ビクトリア州の音楽業界に既に存在するいくつかの問題を悪化させました。

しかし、音楽関係者の労働条件の改善、更なるインクルーシブな文化を創造し、音楽関係の仕事の価値をコミュニティーに理解してもらうために構築するチャンスが、そして私たちが「音楽をどうしていくか」を再度考える機会が、まさに "今"、あるのです。それにより良い結果をもたらし、更に良い作品がを生みだせるように。

なお、ビクトリア州は、会場、音楽関係のビジネス、アーティストに2,500万ドル(日本円:約20億5,220万)近くの資金を提供している。

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