今回、GENELEC インタビューシリーズに登場するのは、近年大人気の Hip Hop シーンを支えるトラックメイカーの中でも、抜群のセンスと技術でその名を知られ、ラッパーのファンとして音楽を聴き始めた若者から音にうるさいマニアまで、幅広いファン層から圧倒的な支持を受ける DJ JAM(DJ ジャム)

常に注目を集める大人気 HipHop クルー YENTOWN(イェンタウン)に所属する DJ JAM は、超速で曲を仕上げる仕事の速さと、それを全く感じさせない丁寧に作り込まれた感のあるトラック、ドープかつキャッチーなビートとサウンド、どこをとっても技巧派と呼ぶに相応しい。


そんな DJ JAM は、実は熱心な GENELEC スピーカー信者でもある。最近の彼の活動内容や、世界を視野に入れた野心に迫りつつ、今回は彼と共に活動するラッパーの Showy(ショウィー)ShowyRENZO も一緒に GENELEC スピーカーの "音" を再確認してもらった。
 

まだ知識がなく「HipHop トラックを作ってみたい」という気持ちだけがあった。そこからスタートしたキャリア

iFLYER:活動を始めたきっかけは? 

DJ JAM:その当時聴いてハマっていたのが HipHop のトラックとかだったので、そういった曲を作るにはどうしたら良いのか周りに尋ねたら「MPC 買ってみたら?」と勧められたので、何も知識がないままとりあえず買ってみました。

iFLYER:初めて買ったレコードは?

DJ JAM:当時 Nujabes(ヌジャベス)ってアーティストが凄い好きで、Shing02(シンゴツー)との『Luv(sic) 』というレコードを買ったのが最初でしたね。
 

iFLYER:YENTOWN に所属し、ビートメイカー/DJ として活躍されていますが、クルーに所属することの意味、クルーの活動と個人の活動における活動内容の違いなどがあれば教えて下さい。

DJ JAM:クルーに所属していても、一人一人がそれぞれ1アーティストですので、各アーティストの質が上がれば YENTOWN 自体の質も上がっていく。自分自身を高めていくという風に考えた方がいいのかなと思ってます。

若手をフックアップし、自身の感覚で BRAVURA RECORDS から新たなムーブメントを​起こしたい

iFLYER:ご自身のレーベル「BRAVURA RECORDS​(ブラビューラ・レコーズ)」を作ろうと思ったきっかけは? 

DJ JAM:音楽活動に時間が取れるようになり、当時 DJ JAM 名義で出した「Betty boop 」っていう曲が大ヒットして、自分の立ち位置が確立されてきたので、そこから派生した新たなムーブメントを、若手をフックアップして起こしたいなと考えていたのが、BRAVURA RECORDS を作ろうと思ったきっかけです。
丁度そのタイミングで Showy と出会い、BRAVURA RECORDS を一緒にやっていくためにベストな人間たちを見つけたなと思いました。
 

iFLYER: "BRAVURA" とは、イタリア語で「ハイスキル」「華やかな演奏」「威勢の良さ」といった意味を示す言葉であるとのことですが、まさにそういった素晴らしい曲しか出さない! という決意がレーベル名に現れているのでしょうか?

DJ JAM:そんな意味があったんですね、知らなかった(笑)。BRAVURA RECORDS を回しているのは僕なんですが、その上にオーナーの矢野さんって人がいて、その人が「BRAVURA RECORDS はどうや!」と言うことでこの名前にしたんです。あと、「皆で "ブラブラ" する」という日本語の意味もあるので、それも良いなと思いましたね。

iFLYER:レーベル運営の他に XLARGE® の PR もしていらっしゃいますが、XLARGE® は「XLARGE RECORDS(エクストララージ・レコーズ
)」というレーベルも運営しており、そちらから様々なラッパーたちとのコラボ曲のリリースもされていますね。ご自身の「BRAVURA RECORDS​」と「XLARGE RECORDS」での活動内容の違いなどを教えて下さい。


DJ JAM:今は、XLARGE® からは主に PR の外注を受けていて、XLARGE RECORDS では、ブランドを広げるための人材として考えて、会社的・ブランド的に一番合っているアーティストを選定しています。洋服を見て、その服のコラボレーションの PR として誰を採用したら合っているか。マーケティング目線で作っています。まだ今ほど MV とかが主流じゃなかった頃、洋服の PR をする際に、MV 内でアーティストに洋服を着せて Look Book として見せるというやり方が今の世の中に合ってるんじゃないか、と考えて、XLARGE® の YouTube チャンネルで MV を出すのを定番化させようとやってきたものが、そのまま XLARGE RECORDS になった感じです。

自分のレーベルでは、有名とか無名とかは関係なく、音楽性が一貫していて BRAVURA RECORDS に合っているアーティストをどんどん出していきたいと考えています。


iFLYER:一人のトラックメイカーとして活動しているのと、レーベルオーナーとしてレーベルを運営していくことの違いを教えてください。

DJ JAM:トラックメイカーは、リリースやコラボレーション等は周りが考えてくれますが、レーベルを運営するにはそういった作業からプレスリリースを出す、イベントをやる、ライブの交渉する、更には地方との連携やライブにおける人材の育成というところまで、全て自分でやってレーベルをまとめていかなければならない。まだ小さいレーベルなので、マネージャー的な役割も僕がやらなきゃならないんです。
リリースに関しても、タイミングやアーティストを有名にするためにどのようなことを仕掛けていくのか。ただ出せば良いというわけではない、ということを、2020年にレーベルを立ち上げてみて感じました。そこが今一番の課題で、苦戦しています。
 

地道な努力と自分の耳を信じること。
"MPCって何?" というところから "技巧派 トラックメイカー" DJ JAM が出来上がるまで


iFLYER:初めてトラックメイクをしたときに作ったのはどのような曲だったのでしょうか? 

DJ JAM:当時、90年代の HipHop にハマっていて、DJ Premier(DJ プレミア)や Pete Rock(ピート・ロック)といったアーティストが好きだったので、そういうビート作りがしたかったんですが、いかんせん何の知識もなく MPC が目の前にあるという状況だったので、まずこれをどうやって扱えば良いのか……っていうところからでした。音楽理論も何も分かっていなかったので、とりあえず音数を足しまくっちゃって、曲自体がゴッチャゴチャになっちゃって、という感じで、めっちゃダサい曲ばかり作っていましたね(笑)。でもそういう経験があるからこそ、曲の中の抜きの大事さというのを理解できたのかな、と思います。

iFLYER:当時と現在で、制作環境や音楽に対しての考え方などは変わりましたか?

DJ JAM:音楽に対しての考え方は全く変わらず「好きでやっている」ということが軸になっています。世の中に合わせてやろうとすると、音楽が好きじゃなくなってきそうで……、それが一番嫌なので……。
現在でも、曲を作り始めた当時のように自分の感覚を信じて、その時々で影響を受けたものをインプット・アウトプットしていくという作り方をしています。それがズレてしまうと、自分の音楽性もズレてきてしまうのかなと。流行りも大事ですけど、トレンドよりも自分の耳を一番大事にしています。


iFLYER:そこから自己流で? 音楽理論はどのように勉強されたのですか?

DJ JAM:友達経由で教えてもらったり、本格的に曲を作るようになったときには、YouTube の How To 動画を見て、そこから EQ やコンプ、リバーブ、ディレイなどを、機材を触りながら覚えました。
「低音がうまく出ない」など、壁にぶち当たる部分が出てくるので、その都度周りに質問したり、なるべくスタジオに足を運んでプロがやっているのを後ろから見たりして、少しずつ勉強してきました。

理論で周波数の音が云々……って言っても、実際に自分の耳で聴いてみないと、その周波数の数字の感覚は分からない。だからなるべく自分でやるようにするんです。そうすると「あ、コレってこんな風な音になるんだ」って、何となく分かってくるので、それを他のことにも応用していけば良い。理論に嵌め過ぎても自分らしさが消えちゃうし、自分の耳を頼りにしている感じですね。

iFLYER:Showy さんとのセッションで、サンプリングする曲を探し、ビートを作り、ラップを録音し……と、トータル1時間20分で曲を仕上げている動画は衝撃的でしたが、短時間で曲を作るコツやポイントは?

DJ JAM:どのメロディーにするのかなど迷い続けてそこに時間を費やしてしまう、というのをトラックメイカーは結構やりがちなんですが、色々と曲を作ってきた結果、直感的に「あ、これカッコいい!」って思ったのって、後で聴いてもずっとカッコいいんですよ。だからもう、それを信じて作っていくのが一番早く作れるコツなんじゃないですかね。
 

iFLYER:あんな短時間でラップも入れて。

DJ JAM:それこそ Showy たちはもっとヤバいですよ。フリースタイルで、リリックも考えてトラックも作れるし。Showy たちも直感で作ってますね。

iFLYER:普段は一曲作るのにどのくらいの時間を掛けているのでしょうか?

DJ JAM:大体30分以内でワンループ作って、アーティストに聴かせて、気に入ってもらえたらもっと深く構成を作っていく、というやり方をしています。ボツ作でも書き出してトラックとして残しています。

iFLYER:逆に、一番長く曲作りに掛けた時間はどのくらいですか?

DJ JAM:それこそ、曲を作り始めた頃は試行錯誤していたので、1週間掛けて一曲作ったりしていました。今は、例えアーティストとのやり取りとりや、再録音・曲作りをし直したりということがあっても……そんなに時間掛からないよね。

ShowyRENZO:超短いっすね。

DJ JAM:速攻だよね(笑)。前に頂いた音源制作の仕事も、注文を受けてからクライアントとのやり取りも含めて2〜3時間で終わりました。


iFLYER:時間があれば、1日中ずっと制作しているのでしょうか?

DJ JAM:ずっと作ってますね。1日に4〜5曲作って、ストックしておいて、後日改めてまた聴きます。そうすると、全然違う感覚で聴けるので。それで「この曲やっぱりカッコいいな」って思ったら、更に深く掘り下げて構成してみます。

iFLYER:サンプリングを探すときに心掛けていることは?

DJ JAM:そこも直感なんですが、自分のルーツが 90' HipHop なので、NY 寄りの古い Jazz モノとかは多めに使いたいとは思ってますね。その他、古い曲……日本だったら演歌等の文化を HipHop としてもっと表現できたらなと思うので、そういう和モノテイストの曲も多めに作っています。


iFLYER:今後曲作りに取り入れてみたいジャンルは?

DJ JAM:今とても仕事が忙しいので、落ち着いたら色々な音楽を聴きたいです。まず自分というものを知ってもらわなければ、という点もあり、同じようなことを多くやってきましたが、自分のスタイルが確立し始めてきたと思うので、新たなステージにチャレンジしてみたいですね。今のスタイルを崩さずにリスナー側が聴いて「新しいな」と思えるような曲作りが今後の課題です。

iFLYER:日仏合作アニメ映画「ムタフカズ -MUTAFUKAZ-」と XLARGE® とのコラボ記念で制作された、YENTOWN の MARZY さんとの楽曲のアニメ MV は、他の DJ JAM さんの楽曲とは少し雰囲気が違いますが、アニメとマッチしていてとてもカッコ良かったです。今後、アニメとのコラボレーションなども更にされるのでしょうか?

DJ JAM:めちゃくちゃやりたいですね! アニメって世界的に見て日本の文化として一番注目されているコンテンツだと思うので、そこに Trap や HipHop ミュージックが取り入れられて、海外に知られたときに「日本の HipHop ってこんなにヤバいのあるんだ!」っていう風に思ってもらえるような状況を作りたいです。アニメには本当に興味があるので、ぜひそういったお話をいただけたら嬉しいです。
 

iFLYER:DJ JAM さんの曲のタイトルには日本を感じさせるものが多いですが、世界的に見た日本の HipHop カルチャーの現状は?

DJ JAM:今、日本の HipHop カルチャーは、自分が DJ 始めてから一番盛り上がっていると思います。ただ言い方は悪いですが、結局どうしても US や海外のトレンドの音源などを落とし込んだり、真似しているアーティストが多くいるように見受けられます。
そうではなくて、日本の文化や自分たちのオリジナルなものをもっと追求して、それを世界に発信したときに、海外の人たちに「こいつらマジヤベェ!」って思われるような状況を作らないとダメなんだろうな、と考えています

僕の日本語の曲のタイトル「Hajimattenai」「TAMAROU」とかも、海外の人からしたら聞きなれない言葉だと思うんで、そういうのをもっと出していけたら良いですね。僕自身も海外で戦っていきたいなと考えているので、日本のカルチャーを潰さないように、もっと気張りたいです。
 
 

iFLYER:音的にも、使われているエフェクト等は非常にドープなのに、そんな中にも要所要所が非常にキャッチーで、元々 HipHop 畑じゃない人が聴いても、とても印象深いのではないかと思います。

DJ JAM:あんま考えたことなかったですね。それこそ直感で作ってるので……。

iFLYER:てっきり、その辺も計算されて作られているのかと思っていました。

DJ JAM:ホントですか?(笑) でも、カッコ良過ぎてもダメなのかなと思っているんです。ちょっとふざけた面も欲しいので、それを狙ってわざとダサいのを入れたりする時もありますね。ファッションとかも、カッコつけ過ぎてるとカッコ良くないじゃないですか。ちょっとダサさがあるけど、それがカッコ良く見えるのが一番カッコいいと思ってるんで。


iFLYER:さっきの演歌の話なども、若い人からしたら「ダサい!」っていうイメージがありますよね。

DJ JAM:そういうイメージを覆したいんですよね。僕たちがやることが全部「カッコいい」ってなった瞬間、それまで否定的だった意見も肯定的に変わると思うんです。それまではちょっと我慢して、何を言われようと芯を崩さずやり続けることが大事なのかな、という気がします。

iFLYER:今後のリリースについて教えてください。

DJ JAM:4月15日に、Showy と DJ JAM でコラボレーションアルバムをリリースします。去年の3月25日に「RED STONE」っていう曲の EP を7曲入りで出したんですが、そのデラックス版という形で、今回19曲入りにしてリリースするので、皆さんに聴いていただけたら嬉しいです。
 

iFLYER:アルバムのテーマは?

DJ JAM:テーマは "セッション" です。実際にアーティストにスタジオへ遊びに来てもらって、そこでノリで作った曲たちの中から厳選した19曲です。

ShowyRENZO:そうですね、"フリースタイルセッション"、っていうイメージですね。

iFLYER:今回参加されているのは、仲が良いアーティストさんばかりなんですか?

DJ JAM:はい、今回のフィーチャリングが、JNKMN、ゆるふわギャング、DOGMA、Lunv Loyal(ルナ・ロイヤル)、SANTAWORLDVIEW(サンタワールドビュー)、Leon Fanourakis(レオン・ファノラキス)、LEX(レックス)、そして Loota(ルータ)。
特に横浜勢は、僕が20代の頃、横浜で DJ をやっていたときに僕の DJ を聴きに来ていた若いイケイケの奴らが SANTAWORLDVIEWと Leon Fanourakisだったんです。ビジネス的に狙ったものではなく、「一緒にやりましょうよ」っていう感じの自然な流れでやりました。

iFLYER:いつもの仲間が集まった、みたいな。

DJ JAM:スタジオを Showy と一緒にやっていて、いつも一緒にいるので、そこに皆集まって……という感じです。
 

エフェクトの繊細な音の聴こえ方も抜群!
トラックメイキングにも趣味の音楽鑑賞にも最高峰の環境を作り出す GENELEC スピーカー

己の耳と積み上げてきた経験を頼りに誰もが認めるクールなトラックを世に送り続ける DJ JAM も、制作において使用している GENELEC スピーカー。普段の彼は「8020」を使用しているとのことだが、今回は現在の GENELEC の最先端テクノロジーを網羅した「8351」で、4月15日にリリースされた Showy × DJ JAM のコラボアルバム『RED STONE (DELUXE)』を聴いてもらった。
 
 

Photo:Yuki Yamauchi
 

RED STONE (DELUXE)

昨年リリースされた23歳の新鋭ラッパー2人組・Showy × DJ JAM(YENTOWN)が昨年リリースしたコラボ EP【RED STONE】のデラックス版が発表!
Masiwei(Higher Brothers)、ゆるふわギャング、 Loota、JNKMN(YENTOWN)らとの超豪華コラボに加え、更にデラックス版では LEX、DOGMA、LUNV LOYAL、Leon Fanourakis、SANTAWORLDVIEW が参加!シークレットゲストにも要注目!!

■ 2021年4月15日配信リリース!!
■ Showy × DJ JAM



【DJ JAM (YENTOWN)】
東京発のヒップホップ・クルー、『YENTOWN』のメンバー。DJ 活動のみならず、トラックメイカーとして楽曲のプロデュースをはじめ、HIPHOP ラジオ番組のホストなど多岐に渡って活躍。2017年から2018年にかけては中国、台湾、タイといった国外での DJ ツアーを開催。現在は東京と、地元である静岡にスタジオを構え、2020年には『BRAVURA RECORDS』を発足。ジャンルを越えた活動だけでなく、若手ラッパーの育成、海外への発信も積極的に行い、国内外問わず活動を継続中。
 

DJ JAM

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GENELEC


1978年にフィンランドで創立されたプロ用スピーカー・メーカーである「GENELEC」。
世界で初めてアンプを内蔵したアクティブ・スピーカーを開発し、その革新的な技術とサウンドによりプロの音楽制作現場では世界標準となっている。
近年では一般ユーザー向け G シリーズや店舗向け製品も販売されているが、そのクオリティに変わりはない。
インダストリアル・デザイナーの Harri Koskinnen 氏が手がけた北欧デザイン、信頼の Made in Finland、再生アルミニウムやリサイクル可能な部品の採用など、正に北欧を代表するスピーカー・ブランドだ。
そんなレコーディング・スタジオのサウンドを自宅や店舗で体感してみてはいかがだろうか。

Genelec Gシリーズ
https://www.genelec.jp/home-speakers/g-series-active-speakers/