浮き沈みの激しい音楽シーンの中で、長年に渡って第一線で活躍し続けるアーティストはそう多くない。今回の GENELEC インタビューシリーズに登場するアーティスト、RAM RIDER(ラムライダー )は、そんな稀有な存在の一人である。

自身の趣味や考え方を大切にしつつ、人一倍の情熱を注ぎながらも、一方で、いかにして音楽業界で生き残り、自分が好きな "音楽を作る" 仕事で生きていくための環境を守るにはどうしたら良いのかを、常に冷静かつ戦略的に考察する RAM RIDER が、音楽制作に対する姿勢と、現在の日本の音楽シーンに感じている課題を語ってくれた。


そして、RAM RIDER といえば、機材に対するこだわりでも知られている。趣味のモジュラー・シンセサイザーからプラグイン、そしてマニア気質な彼が愛用している GENELEC スピーカーの魅力まで、グッと迫ったインタビューとなった。

なお、インタビュー当日、RAM RIDER は GENELEC がかなり昔に配布した販促用のトートバッグを持参してきており、これには現場にいた GENELEC スタッフもビックリ! アーティスト間での GENELEC 人気を再確認させられた瞬間となった。
 

表現の手法やアウトプットへのこだわりと、独自の曲作りの工程とは?

iFLYER:RAM RIDER さんは、かなり初期の頃からビジュアルにこだわっており、 RAM RIDERさんにとって「音楽」と「光」と「映像」を共にステージやMVで表現するということについて、どのような点が重要だとお考えでしょうか?

RAM RIDER:音と演出のタイミングがしっかり合っていると、見た時に気持ち良く感じると思うので、そこを一番大事にしています。もちろんイベントの規模によってやれることにも限界がありますから、そこは大規模なものには負けてしまうので、照明やレーザーのプログラミングのディレイ等をきちんと現場で調整してから本番に望むというような点には気をつけていました。


iFLYER:RAM RIDERさんは作詞、作曲、制作、ボーカル、ビジュアル、と表現が音楽だけにとどまりません。表現の根幹であろう、曲作りの際の手順を教えてください。 アイディアが突然降って来るようなことも、時にはあったりするのでしょうか?

RAM RIDER:僕は、アイディアが突発的に浮かぶとか、散歩中にメロディが浮かぶとかは一切なくて、基本的に外にいるときはリフレッシュしています。
小さな自分のスタジオを持っているのですが、そこで椅子に座って、しっかり楽器が鳴る状態で初めて作り始めます。
例えば「東京論」という曲であれば、東京出身で東京にずっと住んでいて、そういう人間が歌う東京の歌って面白そうだな……みたいなことは外で考えますが、特に頭の中でメロディーを考えたりはせず、作詞も含めてその辺はスタジオに戻ってからやる感じです。


iFLYER:特に親交深いアーティストさんは? また、他のアーティストさんたちからインスパイアされたりすることは?

RAM RIDER:最近は新型コロナウイルスもあってなかなか他のアーティストさんに会う機会も減りましたが、お互いに、会わなくても作品を聴いていたら色々と感じるところはありますね。今、どういう仕事をしているとか、どこに力を入れているとか、そういう話はよくしています。

僕の周りのアーティストの方たちは、アーティストでありプロデューサーでもある方が多いので、どうやってこの業界で長く続けていくのか、という点は皆考えているとは思います。「良い音楽作っていれば生き残れる」とは、誰も思ってないんじゃないですかね。それを口に出す人もいれば出さない人もいますが、時々プライベートで話をすると、そういう話にもなります。
 

アーティストとして音楽を作り続けることへの意欲が自身のレーベル立ち上げに繋がった

iFLYER:2002年から RAM RIDER 名義で活動を始め、2019年12月にご自身のレーベル「401(よん まるいち)」を設立を発表、同時に約6年ぶりとなる「東京論」をリリースされましたが、レーベル「401」を設立するに至った経緯、6年ぶりのリリースに関する裏話などがあれば教えて下さい。

RAM RIDER:今後作品をリリースしていくにあたって、できるだけ自分のペース以外の理由で滞らないようにしようと思ったんです。
この6年間、楽曲提供やプロデュースをずっとやっていて、それが一つの柱としてあるので、レーベルに関しては赤字にならなければ作品を出し続ける方が大事だな、と思って作りました。
MV も可能な限り毎回作って発表してるんですが、結果的に、それを様々なメディアに情報として扱ってもらえるので、恐らく、僕のリリース情報や MV を見た業界の方が楽曲提供のオファーをくださったり、というサイクルになっているんじゃないかなと思います。
最初からそれを考えてレーベルを作ったので、アーティスト一本でやっていくぞ、というよりは、アーティストとして表現をしながら色んな人の仕事に関われたらな、ということで始めたのが大きいですね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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iFLYER:東京論がとても好きで、MV で建物が伸びるのが印象的でした。 SNS に書かれたコメントの中にも「自分のマンションが伸びてる!」と書いている方がいましたよね。見慣れている景色なので特に親近感が湧いて興味を惹かれましたが、あのアイディアもご自身のものなのですか?

RAM RIDER:いつもインターネットで面白そうな映像を作っている人を探しているのですが、当時、高校二年生のマルルーン君というクリエイターの作品がとても面白かったので、彼にお願いしたんです。当時、彼は昼間は高校に通っていたので、昼間に僕が一人で車で色々な場所へ撮影に行って、素材を彼に送って、「ここ、こんな風に動いたら面白くない?」というような意見を彼に投げて、彼が夜、放課後に編集して……っていうのを繰り返して、作ってもらいました。
彼、凄いんですよ、17歳であんなの作って。彼は今、芸術系・映像系の学校に進んでいて、既にでんぱ組.incの映像とかも作っているし、どんどん表現の幅を広げている最中だと思います。
 

iFLYER:またマルルーンさんとコラボの予定はありますか?

RAM RIDER:そうですね、今も一応、やろうとは言ってるんですが。絶対売れる人だから、遠くに行かないようにマメに連絡してます!(笑)
彼の高校の卒業制作の課題のために、僕が音楽作ったりもしました。30秒〜1分ぐらいの短い映像作品なんですが、逆にまた、自分の音楽に映像つけてもらっているような感覚でしたね。
彼は毎年発表される日本の優れた映像作家を紹介する「映像作家100」に2年連続で入っていて、凄く嬉しいです。


iFLYER:長年、多岐に渡る活動をされていますが、当初から現在まで活動を続けてきた中で、音楽に対する信念や、変わらず心にある重要なポリシー、またやりがいを感じるのはどんな時ですか?

RAM RIDER:他のアーティストをプロデュースした作品が発表されたときに、それまで僕を知らなかった人が感想やお礼を言ってくれたり、それをきっかけに僕の曲を聴くようになってくれたり、あとはもちろん自分のファンがリアクションをくれるのも嬉しいですね。
やっていることは専門の作曲家の方や、音楽プロデューサーとそんなに変わらないんですが、アーティストとしてこのようなインタビューの場に呼んでいただいたりするのも、ファンの皆さんのお陰なので、やってて良かったなと思います。


iFLYER:プロデュース業とご自身のアーティスト業ではだいぶ違う点もありますか?

RAM RIDER:自分のアーティスト業では、お題を出すのが自分なので、自由なだけに客観視できず難しい部分はあります。やり方や違いますが、基本的には作る楽しさや苦しさの根本的な部分は変わらないです。


iFLYER:海外のファンも多いと思うんですが、海外のファンの反応についてはいかがですか?

RAM RIDER:海外のファンは、曲も全部聴いているし、僕がネットにアップした写真やインスタライブ等も全部保存したりしているような熱心な方が多いです。そういった海外のファンは、僕のことを知っているくらいなので、そもそも日本のポップスや中田(ヤスタカ)君みたいな日本の打ち込みやダンスミュージックアーティストが好き、みたいなコアなファンが多いですね。その中でたどり着いてくれた、みたいなイメージです。

あと、やはりここ10年で、日本のダンスミュージックやクラブ・ミュージックが好きだった海外ファンが、物凄く韓国の音楽に傾倒しているな、というのを肌で感じますね。海外のフェスに出演した際に仲良くなったファンの方たちのタイムラインに、BIGBANG ぐらいから、最近だと BTS とかが流れてくる割合が増えました。この10年の圧倒的な変化でしょうね。


iFLYER:K-POP や K-HIPHOP 等の音楽や新たなムーブメントなどをご自身の音楽に取り入れようと思ったりすることはありますか?

RAM RIDER:いくらでも取り込むつもりでやっています。K-POP に関しては、アメリカの音楽を正確に取り込んでいるな、と前から思っていて、僕が音楽的に取り入れることはないですが、アメリカの音楽に韓国語を乗せるとこんな感じなんだ、じゃあ日本語だったらどうなるのかな? っていう部分で挑戦してみたりはしています。


iFLYER:確かに、韓国の音楽はとてもクオリティが高く作られていますよね。

RAM RIDER:お金をかけてるというのと、日本に比べて楽曲制作の共同作業が進んでいるせいじゃないでしょうか。アメリカのプロデューサーを起用したりもしているし。作詞、作曲、アレンジだけではなくて、トラック、ビートメイカー、メロディー、フレーズ、フェイクでメロディをパパッといれる人とか、それぞれを担当する人が皆で集まって作るからクオリティが高くなるというのはあると思います。
日本でも作詞、作曲者以外にも積極的に印税が配分されればみんな得意な技術やセンスを持ち寄って楽曲をつくれるようになるのかなと思います。僕もアレンジやトラックメイキングが一番時間がかかるので、その辺のバランスでしょうか。
 
日本だと、めちゃくちゃカッコいいトラックを誰かが作っても、アレンジが買い取りだったりするとヒットが生まれてもその人のメリットはそこまで大きくないですよね。海外はそういうとこが少しづつ変化してるのかなという印象です。
 
日本でも HipHop アーティストなんかだと作詞作曲に限らず YouTube の再生回数やグッズの売り上げなどに応じてチームで分け合う、というやり方のもあると聞きます。そういうのもいいなと思いました。

好きなものを "好き” でい続ける工夫がモチベーションを保つ秘訣?

iFLYER:最近ではハードではなくプラグインをメインで使用されているとのことですが「どこでも同じようにトラックメイキングできる」という以外に、プラグインの利点や両者の違いなどがあればお聞かせください。また RAM RIDER さんのインスタを見ていると、様々なシンセサイザーの写真がありますが、お気に入りのシンセサイザーは?

RAM RIDER:プラグインの一番のメリットは、まず同じ楽器を2台でも3台でも同時に使えるということと、音色の再現性として、例えば5年前、10年前に作った曲が、全く同じ正確な音色でもう一回立ち上がるので、良いところまで作ったけどイマイチだな、というものを、作りかけのままそのままキープしておいて、数年後に良いアイデアが浮かばなくて困ったときにまたそれを使って曲を作ったりできる点ですね。これが、普通のハードのシンセだと、音色をもう一回ロードして、MIDI  で繋げ直して、バランスも、ミキサーを当時の感じに再現して……ってやらないといけないので、そこはやはり大きいです。直接触れたり、音の深みやケーブルを通して来るものの良さもあるので、僕はハードも好きなんですが。

お気に入りのシンセは、KORG が出している Volca シリーズ。昔の VHS サイズの2〜3万円ぐらいのやつですね。アナログのドラムマシーンやサンプリングプレイヤー、ベースシンセ等が一個に1パートぐらいしかなくて、アナログに繋げて使えるやつがあるんですが、音も、ガジェットとしても好きです。作業している横に6台ぐらい置いて、時々音を出したりしています。
 
こういった単体のシンセサイザーは、曲作りで直接使うことは滅多にないのですが、遊んでるとリフレッシュになりますね。音にあわせて動く LED をみているだけでも楽しいですし。
小型のシンセって、画面やデータがないし、波形を見たりするわけでもないので、仕事をしている感覚から解放される感じがあります。目的もゴールもなく、適当に回し始めて繋げて音を出して……ってやっているうちに、たまにこのフレーズ良いな、というのがあると録音してみたりはします。

DAW は、僕の感覚では、オフィスワークの方がエクセルを打ってるのと感覚的にそれほど変わらない。音楽をつくるワクワクというよりは「よし、今日もやるぞ」みたいな。でも、仕事で効率良く楽曲制作をするのとは全然違う感じで、作業が終わってから、お酒を飲みながらモジュラーシンセを触って音を出したり。曲作りの仕事をしていると、音楽以外の映画やゲームやフィギュアとかに興味が行くんですよね。そうすると、段々「あれ? 自分にとって音楽ってどんなものだったっけ?」とか思っていまうこともあるんですが、シンセのつまみを触っていると、「あ、俺、音楽好きだな」って再確認させてくれたりします。
 
iFLYER:昨年11月、YouTube でライブ配信されていた「スタジオ配信 part1」「スタジオ作業配信 60分でデモつくる」の場所は、RAM RIDERさんの実際のスタジオですか? 多数のフィギュアが置かれていましたよね。Instagram にも、映画やアメコミ、フィギュア、ファミコン等の写真がたくさんありますね。

RAM RIDER:スタジオを作ったのは、プライベートと切り離して人を呼べる場所を作ろうと思ったのがきっかけです。昔は自分の部屋で曲作りをしていたんですが、プライベートと仕事の境目がなくなってしまったので、10年ぐらい前にスタジオを作りました。スタジオは、自分の家から一駅ぐらいの場所にあるんですが、そこまで歩く短い時間が、自分にとってとても大切ですね。

レコーディングや仕事の打ち合わせ、曲作り、ポッドキャスト配信などどはもちろんですが、コロナ前は音楽仲間とときどき遊んだり、そういう場所にもなってました。
 

音楽制作に割ける予算が削られていく中で楽曲制作ができてそのままレコーディングもできる人がいれば依頼しやすいかな、と思ったのもスタジオをつくった大きな理由のひとつですね。打ち合わせも音源や動画をチェックしながらじっくりできますし、外でやるより安心かなと。
 
僕のスタジオは狭いので、もしアイドル7人だったら3チームぐらいに分けて来ていただくんですけど、人が来れて、レコーディングできて、交流できる場所、あるいはレコーディングしてるときに、アーティストのマネージャーさんやディレクターさんが横で多少でも仕事ができるような場所にできるように工夫はしてます。今はブースをなくして、部屋全体を全部吸音・防音にしてあるところに一緒にいてもらうので、静かにはしてもらわないといけず、ちょっと不便をおかけしてますが(笑)。

あともう一つは「バーニーグランドマンマスタリング」というマスタリングスタジオに前田さんという方がいて、その方の部屋は様々な名作のマスタリングがされた場所なんですが、スピーカーの上にもスターウォーズのフィギュアが置いてあったり、フィギュアがずら〜っと並んでいるんですよ。僕もデビュー当時、初期の作品のマスタリングをそこでさせていただいたんですが、前田さんの部屋を見たときに「自分がワクワクしたり、居心地が良かったり、遊び心がある場所にするというのはきっと大事なんだな」と思って、自分もフィギュアを並べたりし始めたんです。フィギュアの棚の LED も、全部自分でつけました(笑)。
 
iFLYER:あの棚、凝ってますよね。

RAM RIDER:フィギュアや映画が好きなんです。あと、写真を撮ったときに、楽しそうな場所で仕事しているな、と思われたいのもあって。結果的にこういう風に取り上げてもらえるきっかけにもなってよかったと思います。
自宅だと写したくない場所とかありますが、スタジオは誰が来てどこを撮影してもらっても大丈夫、みたいな場所にしたかったんです。


iFLYER:現在進行形でフィギュアは収集されているんですか?

RAM RIDER:昨日、X MEN のウルヴァリンがまた1体届きました(笑)。


iFLYER:毎月どのくらい買われてるんですか?

RAM RIDER:いやもう、分かんないですね……箱を置く場所がなくて、倉庫を一個借りて、そこにフィギュアの箱だけずらっと……。
 
iFLYER:箱だけ? 箱は全部取っておくんですか?

RAM RIDER:箱は、色んなパーツや予備の衣装が付いてたりするんで。絶対捨てないです。
僕、お金をほとんど使わないんですが、仕事してお金を使っている実感があるのはフィギュアだけなんですよね。


iFLYER:おお……じゃあ、かなりつぎ込んでらっしゃいますね(笑)。

RAM RIDER:曲を制作したお金を頂くと、それがフィギュアになる(笑)。
最近のフィギュアの中でも、ちょっと値段の高いホットトイズのフィギュアみたいなものになると、写真を上手に撮ると本人にしか見えないようなクオリティのものが結構あるんですよ。ジョーカーのヒース・レジャーのフィギュアなんて、写真に撮ると本物にしか見えなかったり、iPhoneで撮ると、Google フォトが本人として認識するんですよ。
 
iFLYER:えっ……!?!?

RAM RIDER:映画のポスターと、フィギュアと、全部同じ人として認識するんです。それぐらい精巧なやつがあるので、人形というよりも、本物そっくりなちっちゃい人みたいなものというか。それを見ているのが楽しいんです。


iFLYER:RAM RIDERさんの楽曲の PV はアニメ風のものが多かったり、第7回新千歳空港国際アニメーション映画祭では「SET ME FREE」の MV が「北海道コカ・コーラ賞」を受賞したり、「交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい」の MUSIC COLLECTION への「sakura (RAM RIDER REMIX)」提供、LA のアニメ・エ キスポへの出演など、アニメと関連深いお仕事も多数されています。RAM RIDER さん自身もアニメファンなのでしょうか? 

RAM RIDER:元々アニメは好きなんですが、中でも劇編アニメや OVA が凄く好きで「フリクリ」やガイナックスの「トップをねらえ!」、「AKIRA」、故・今敏監督の「千年女優」「パプリカ」などが特に好きです。高校生の頃から STUDIO4℃ の監督で KEN ISHII さんの「EXTRA」という楽曲のミュージッククリップを作成した森本晃司さんという方にとても良くしていただいていて、初めて出したアナログのジャケットを森本晃司さんに描いていただいたんですよ。
 

iFLYER:凄っ……!

RAM RIDER:そこから日本のアニメシーンのそういった方たちとの交流が生まれました。


iFLYER:ご自身の PV なども、アニメから影響を受けたりすることはあるのでしょうか?

RAM RIDER:さっきも言った通り、SNS で気になった映像作家さんはすぐフォローしているんですが、「Set Me Free」の場合は、服部グラフィクスさんという、僕と同世代で、GIFアニメみたいなのをバンバンUPしている人がいて、いわゆる8bitのマリオみたいなカクカクのイラストでも、めちゃくちゃ速く動く GIF アニメを作っている人がいて、短い動画なんですが、ループをずっと見ていられるぐらい目に気持ち良いものを作る人で、その人に何か一本、短編を作りたいと思ってお願いしたのがきっかけですね。
 

犬と猫が出てくるビデオなんですが、自分の中では話を歌詞に合わせて物語として作ったんですよね。それが新千歳空港国際アニメーション映画祭の短編アニメーション部門にノミネートされたんですが、この映画祭には短編映画以外にもミュージックビデオ部門がちゃんとあるんですよ。にも関わらず自分たちの作品が短編アニメーション部門にノミネートしていただいたのがとても嬉しくて。もちろん MV なんですけど、無声映画というか、セリフのないお話として作ったので、そこを受け入れていただいたのがとても嬉しかったですね。


iFLYER:歌詞が物語になっていて、1本の作品になっているということですね。

RAM RIDER:そうです。途中で主人公たちの視点が変わるんですが、可愛くてコミカルな感じでありつつも、二人の心の距離みたいなものが、対人関係や恋人との関係で悩んでいる人に何か伝わるものがあればいいなぁ、という思いで作りました。そこがちゃんと引っかかったのが嬉しかったですね。


iFLYER:RAM RIDER さんのように音楽制作を中心に幅広く活動したいと思っている新人ミュージシャンの方へのアドバイスを下さい。

RAM RIDER:僕もそうだし、今この業界で残っている同世代の人たちと話をしても、皆生き残っている方法がそれぞれ違っていて、同じやり方で残っている人がいないんですよね。多分いろんなことに挑戦するのが良いと思うんですけれども。自分の生活の保険を全部外してやる人もいるし、収入のことがメンタルに響くようなタイプの人は、副業を持ってやるって決めていてうまくいっている人もいる。「こうすればうまくいく」ていうのがないので、難しい。

だから「音楽で成功する」ことよりも、まず本当に音楽が好きであれば、どうすればやめずに続けていけるだろうか、どうやれば楽しくずっと生きていけるだろうか、っていうのを考えたら良いんじゃないですかね。

自身の生活の中に"音楽を作る" ということがある前提で考えていないと、音楽に熱中しているうちに、大好きだった "音楽が作れる環境" を維持できなくなってしまう。そういった人をとてもたくさん見てきました。それならそれで、また別の幸せを見つけられるので良いとは思いますが、"音楽を作って楽しむことをサイクルにするための方法" は考えるようにしてます。最初から必ずしも自分の作った音楽だけで生活できることを前提にしない方がいいのかなと僕は思いますが、それも人それぞれですね。


iFLYER:長い間活動されてきて、思い悩んだりしたこともあるんですか?

RAM RIDER:思い悩んでない時期はないですよ! 常に悩んでいます。毎年年末になると、ああ、今年も1年、ミュージシャンとして終えられたな……、と思ってホッとします。それを何十年も繰り返してる。現在副業はしていませんが、音楽一本で一生やっていける、と確信したことはない。ずっとこの悩みを抱えて生きていくのだろうと思います。


iFLYER:でも、自分が好きなことを仕事にして生きていけるというのは、凄いことですよね。一握りの人しかいないと思います。

RAM RIDER:最近、曲を作るペースを上げて、自分を追い込みながらやっているんですが、そういうのも大事だし、やはり辞めずに続けるには何をするか、というのも大事なのかな、と思っています。
そこはでも、全然答えは出てないですが、皆答えは出てないから大丈夫だと思います(笑)。むしろ、ベテランの方が大変だと思いますよ。
若い人は重い荷物を何も持っていない分、とても柔軟な考えができると思いますし、アイディアがあれば、Mac 一台で音楽を作れる。自由に楽しくやって、色々なことを試してみれば良いと思います。

 

僅かな音のミスも見逃さない!
RAM RIDER の製作を支える、究極の "音の再現性" を誇る GENELEC スピーカー

趣味も仕事もとことん突き詰めてしまう、こだわり気質な RAM RIDER。そんな彼が長年ファンであるという GENELEC スピーカーは、再現性の高さはもちろん、クラブユースなベースサウンドもしっかりと鳴るのがポイントだとか。世界から注目される Electronic Music を作るアーティストもベタ褒めの、GENELEC スピーカーの良さとは……?
今回も、現在の GENELEC の最先端テクノロジーを網羅した「8351」で、その音を再確認してもらった。



Photo:根津 雄貴
 
 

RAM RIDER

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GENELEC


1978年にフィンランドで創立されたプロ用スピーカー・メーカーである「GENELEC」。
世界で初めてアンプを内蔵したアクティブ・スピーカーを開発し、その革新的な技術とサウンドによりプロの音楽制作現場では世界標準となっている。
近年では一般ユーザー向け G シリーズや店舗向け製品も販売されているが、そのクオリティに変わりはない。
インダストリアル・デザイナーの Harri Koskinnen 氏が手がけた北欧デザイン、信頼の Made in Finland、再生アルミニウムやリサイクル可能な部品の採用など、正に北欧を代表するスピーカー・ブランドだ。
そんなレコーディング・スタジオのサウンドを自宅や店舗で体感してみてはいかがだろうか。

Genelec Gシリーズ
https://www.genelec.jp/home-speakers/g-series-active-speakers/