"MIDI の父” として尊敬を集めたシンセデザインの先駆者であるシンセサイザーデザイン会社「Sequential」創立者、Dave Smith(デイヴ・スミス)が72歳で死去したことを同社が SNS にて発表した。1978年、Dave Smith が20代にして創り出した「Prophet-5」は、マイクロプロセッサが組み込まれた初のシンセサイザーであり、また初の "完全にプログラム可能なポリフォニックシンセ" でもあった。
 
「Prophet-5」が発明される前は、シンセサイザーはケーブルとノブを受動で調整する必要があり、正確な設定を再現することは不可能だった。Dave Smith のイノベーションは、マイクロプロセッサを介してパッチをメモリに保存することで、ミュージシャンが確実にサウンドを再現することができるようにした点だった。「Prophet-5」は、ポリフォニックシンセの基礎となり、発明から50年以上が経った今現在に至るまで、シンセデザインのインスピレーションを人々に与え続けている。

アナログシンセの革新における業績とはまた別に、Dave Smith はデジタル音楽技術の分野においても注目を集めた。

1982年、様々な種類のシンセ間の標準的な通信の欠如に不満を感じた Dave Smith は、リング・モジュレーター「Maestro」の開発でも知られるエンジニア/発明家の Tom Oberheim(トム・オーバーハイム)、Roland の 梯 郁太郎(かけはし いくたろう)、そして KORG、YAMAHA、KAWAI といったメーカーの代表者たちと協力し、様々なメーカーのコンピューターとシンセサイザーに共通の通信プロトコルを開発。これを「MIDI(Musical Instrument Digital Interface)」と名づけ、同年後半に初の MIDI シンセ「Prophet-600」を開発した。翌年の1983年1月の NAMM ショーでは、「Prophet-600」と「Jupiter 6」が正常に接続され、一緒に演奏された。様々なメーカーのシンセサイザーが相互に統合されたのは、これが初となった。

MIDI は、今日まで「電子機器の普遍的な言語」として確固たる地位を築いており、エレクトロニック・ミュージックの制作技術に革命をもたらした。それにより、無数の DAW(Digital Audio Workstations)、コントローラー、キーボードをシームレスに統合できるようになった。
Dave Smith は、Roland の 梯 郁太郎と並んで MIDI に命を吹き込んだ業績が評価され、2013年にグラミー賞 特別功労賞技術賞(Technical Grammy)を受賞した。

Dave Smith のシンセは、Dr. Dre(ドクター・ドレ)、Radiohead(レディオヘッド)、Madonna(マドンナ)、Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)、John Carpenter(ジョン・カーペンター)を筆頭に、現代に至るまで、あらゆる世代のミュージシャンに影響を与えてきている。

また、Dave Smith の訃報を受け、Flying Lotus(フライング・ロータス)、Richie Hawtin(リッチー・ホゥティン)、Nina Kraviz(ニーナ・クラヴィッツ)をはじめとした多数のエレクトロニック・ミュージック・アーティストたちが、哀悼のコメントを SNS に投稿している。
 
 
 

心よりお悔やみ申し上げます。