Google(グーグル)ユニバーサル・ミュージックグループ(UMG)が、他のアーティストの既存作品を使用して「ディープフェイク」音楽を作成するためのAIを搭載したツールの開発に向けて交渉中であると、フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。

この契約では、著作権所有者に肖像権の使用料を支払い、著作権所有者が Google や UMG に対して AI による複製を目的とした作品の使用許諾を与えるというものであるとのことだ。

このニュースは、ユーザーがプロンプトを入力することで音楽を作成できるジェネレーティブ AI ツール「Music LM」を Google がリリースしたことを受けて発表された。クリエイターが UMG からリリースされた楽曲のボーカル、歌詞、サウンドを複製するためには、同社が UMG の楽曲のライセンスを取得する必要があることを考えると、Music LM はこの契約の要となる可能性が高い。

この契約は、今日の世界音楽市場のおよそ3分の1を支配する UMG にとって、いささか特殊なものとなる。同社は今年4月、ストリーミング・プラットフォームに対し、 AI プラットフォームが大規模な言語モデルをトレーニングする際に、自社の音楽カタログを活用できないようにするよう求めていた。

両社が最終的な合意に達すれば、物議を醸しているジェネレーティブ AI と音楽の結びつきの行く末を左右するものとなる可能性がある。この枠組みの規模は、最近 Grimes(グライムス)と提携し、アーティストが "ペナルティなしで" 彼女のディープフェイク・ボーカルを利用し、ストリーミング・プラットフォームに楽曲を配信してロイヤリティを分配することを可能とするパイロット・プログラムを開始した TuneCore(チューンコア)を凌ぐものとなるだろう。

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一方、UMG のロバート・カインクル CEO は、今週行われた同社の第四半期決算説明会にて、ディープフェイク技術の拡散を非難したと報じられている。彼は、自分の肖像が音楽制作に使われるかどうかを決めるのはアーティストであるべきだと考えていると述べており、もしかすると社内でもディープフェイクに関する倫理観が真っ二つに分かれている可能性もある。

アーティストにとって、自分の声ほど貴重なものはない。
そして彼らの声を守ることは、彼らの生活を守り、人格を守ることなのだ。