しかめっ面はもうやめて、日焼け止めを塗りたくろう。“今季一番アツい曲”という形で、本格的な夏がやって来た。そう、ピクシー・ロットが還ってきたのだ。ひときわ明るい輝きを放つこの新星ポップ・スターは、先月、セカンド・アルバムからの第1弾シングルをリリース。彼氏なしのフリーでいること(と、テーブルの上で踊ること)の喜びを讃える、ハイ・エナジーな「All About Tonight」は、すぐさまインターネット界でヒットし、ラジオやテレビを席巻した。かつてまだ10代だった時に大旋風を巻き起こした彼女が、曲の冒頭で「新しい靴を買って、新たな心構えで臨んでるのよ…一番重要なのは今夜」と宣言している通りだ。数字もまた重要である。デビュー・アルバム『Turn It Up』のリリースから2年と経たないうちに、ピクシー・ロットは実に幅広い人気を獲得してきた。その実例を数字で上げてみよう…。まずデビュー・アルバムは100万枚を売上げ、トリプル・ブラチナの快挙を達成。No.1シングルが2枚。長期に亘るチャートインは96週を越え、現在も継続中だ。ブリット・アウォーズでは3部門でノミネート。2009年のMTVヨーロッパ音楽賞では2部門を制覇。19公演に及ぶ全英ツアーは、すべてソールドアウト。フェイスブックのフレンド登録は100万人を突破。公式ツイッターには50万フォロワー。そして「All About Tonight」のビデオは先月ネットで公開されたばかりだというのに、既に視聴回数が200万回を越えている。 しかし何より最も重要なのは、彼女の音楽だ。今回、ピクシーはセカンド・アルバムを制作するに当たり、デビュー作での大成功を足場として前進するだけではなく、曲作りとレコーディグの過程で、前作を上回るような素晴らしい人々からの助力を得ようと固く決意。そしてスティーヴィー・ワンダーやジョン・レジェンドらとの、心通う音楽プロジェクトを実現した。また、「Mama Do (Uh Oh, Uh Oh)」や「Boys And Girls」「Cry Me Out」といった曲で彼女のソングライティング・パートナーを務めた、フィル・ソーナリーとマッズ・ハーグと再びタッグを結成。そしてロンドン、ニューヨーク、ロサンジェルスの様々なスタジオでレコーディング。加えて、有名ブロガーのペレス・ヒルトンが後押ししたコラボも実践。これだけのことをやるには、身がすくんでもおかしくはない。だがピクシーは違った。 「あちこち旅しながら色んな人達と仕事することに、私はすごく慣れてるの」と語る彼女は、今年1月、10代に別れを告げたばかり。しかし若くして既にベテランだ。「初めて会った相手と2人でやることになって、その人が若い男性で、彼の部屋で2人だけで曲に取り組み、その日の終わりまでにはヒット・ソングを書き上げることになっている ー それってかなり変な状況だとも言えるわよね!」と彼女は笑う。「でもそういうことを、私は13歳の頃からずっとやってるのよ。最初の何年かはぶっ続けで、私は毎日スタジオに入ってた。これまでの人生の3分の1よ! だからスタジオに入って、色んな人達に会い、一緒に曲作りをするってことは、私にとってごく当たり前のことなの。そして以前一緒にやってうまくいった相手とまた仕事をすれば、確かにより良い曲が生まれる。いつもそう思ってるわ」と、彼女は言い添える。現在タイトル未定の新作からの2枚目のシングルに予定されている、エレクトロ色を帯びた「Kiss The Stars」を3人で共作したことを、彼女は強調しているのだ。「あの曲は、かなり短時間で書き上がったの。ある日、中心となるアイディアが浮かんで、次の日にはもう完成していたわ」 新曲のうちの幾つかはアップテンポなダンス調となっているが、それらがまた、「Nobody Does It Better」のような深みのあるソウルフルな響きの曲や、ストリングスをちりばめた「Everybody Hurts Sometimes」等と好バランスを成している。 後者を共作したのは、ロスを拠点とする21歳のソングライター、CJ・バラン(CJ Baran)。彼はペレス・ヒルトンの友人だ。アメリカで早くからピクシーを熱心に応援していたカリスマ・ブロガーのペレスは、2人のコラボを提案。バランは以前、ボーイズ・グループのプッシュ・プレイ(Push Play)で活動していたが、その経歴は同曲の3人目の作者と同じだ。そう、元バステッドのジェイムス・ボーンである。 「私の仕事がオフだったある日、ロンドンのスタジオで会うことにしたの ー レコード会社にも内緒でね」と、ニッコリする彼女。結果、この秘密のコラボレーションは強く心を揺さぶる曲に仕上がり、今アルバムの最も重要な核となった。雄大で情熱的なこの曲では、ピクシーの声域の、よりしゃがれた、よりソウルフルな側面が、限界まで発揮されている。 「私は子供の頃から、ソウルをいっぱい聴いて育ってきたの」とピクシー。英南東部のケント州とエセックス州で育った彼女は、歌ったり踊ったりするのが好きな女の子だった。「ファースト・アルバムでは、甘めのポップ・チューンが多かったでしょ。でも今度のアルバムでは、ハッピーで元気の出る曲に加えて、よりソウルフルなサウンドを追求したかったの。それで、こういった曲をもっと歌うようになったってわけ」 「今回は、ファーストよりも大人っぽい作品にしたかったのよ」と、彼女は続ける。「ファースト・アルバムに取り掛かった時は、私は13歳とか14歳とかだったでしょ。あのアルバムの曲を書き上げるのに4年はかかったわ。そのうちの1つ「Hold Me In Your Arms」は、14歳の時に書いた曲で、ヴォーカルも当時録音したものなの。私の声を聴いてもらえれば、それが分かると思う。甘ったるくて、無邪気なのよね」 「You Win」という曲では、ジョン・レジェンドがピアノとヴォーカルで参加。かつてカニエ・ウェストの弟子としても知られたこの名高い人物をピクシーに紹介したのは、共通の友人だった。出会ってすぐに意気投合した2人は、それぞれ同じくらい多忙なスケジュールの中、何とか空き時間を作り、ある晩ニューヨークで同曲を書き上げたのであった。 レトロなソウル感が漂う「Stevie On The Radio」は、瞬時のひらめきから生まれたケースだ。この曲ではスティーヴィー・ワンダーがハーモニカを演奏。このソウル界の大御所にピクシーを紹介したのは、また別の共通の友人である。ロスで共にディナーを囲みながら知己を深め、コラボの話が持ち上がったのだが、ピクシーはその時の自分がファン丸出しだったことを認めている……。「あれほど数多くの素晴らしい名曲を彼がどうやって書いたのかとか、自分ではどの曲を一番気に入ってるかとか、質問攻めにしてたのよね、丸っきりファン状態で! そしたら彼はこう言ったの、『自分の書いた曲はどれも、僕にとっては子供なんだ。全部愛しているよ』ってね。彼は本当に優しくて、腰の低い人だったわ」。 そして曲のアイディアは、今も次から次へと生まれている。今年の夏はロンドンで、ミスター・ハドソンとキャシー・デニスと共に曲作りを行っていたピクシー。「What Do You Take Me For」という曲では、共演相手として、ある新進気鋭のラッパーに目を付けている。彼女はティンチー・ストライダーともレコーディングを行っており、その曲は彼の次のアルバムに収録予定だ。 ピクシーがインスピレーションを発揮しているのは、音楽の分野だけではない。ファッション・ブランド『Lipsy』(リプシー)とのコラボ・デザイナーを務めている彼女は、4期目のコレクションに向けて、現在デザインを準備中。同ブランドとのパートナーシップは、ますます強力になっている。また、その個性的なルックスによって、彼女は更に新たな面白いテリトリーへと足を踏み入れてもいる。今年の夏の初め、モデル事務所の『セレクト』と契約。音楽界での地位を固めた彼女は、他の分野にも手を広げる準備ができたと感じているのだ。 しかし彼女はこれからもずっと、常に初恋の相手と寄り添い続けていくことだろう。そう、音楽と。 「もし誰かが1年前、『セカンド・アルバムではジョン・レジェンドやスティーヴィー・ワンダーとコラボすることになるぞ』って私に言ったとしたら、絶対に信じてなかったでしょうね」と、笑顔を浮かべるピクシー。「でも私は本当に長い間、13歳の頃からずっと、ここを目指して取り組んできたのよ。そして必死に頑張ってきた。他の道なんて思いもつかなかったわ。絶対にやり抜こうと心に決めてた。でも今回のアルバムでコラボできた素晴らしい人達との仕事は、すごく自然発生的に実現したのよね。レコード会社が推し進めたわけでもないし、私が無理強いしたわけでもない。ただ自然に良い方向に進んでいっただけ。私はすごく運が良かったったと感じてるわ」。 もしあなたがピクシー・ロットと同じくらい、才能と熱意に溢れた、生まれながらのポップ・スターならば、世界中の幸運はあなたのものになることだろう。
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