ムシムシと湿度の高い真夏の横浜の夕暮れ時、一人、またひとりと、人々が象の鼻桟橋に集ってくる。
雀色に染まった象の鼻テラスに集った人々が乗り込んでいくのは、一隻の船。船上のオープンデッキには特設のステージが設置されており、サウンドチェックを行うスタッフの姿に、集った人々は胸の高まりを抑えきれない様子で、そそくさと足早に船へと乗り込む。


桟橋から船へと飛び移ると、足の裏に船からの波の揺れが伝わってきて、更にクルーズへの期待が高まる。船が桟橋を離れるとすぐにオープンデッキのステージでは、船のモーターの唸りを掻き消すようにDJのプレイが始まる。髪を撫でる海風が非常に心地良い。コスモワールドのエレクトリカルな夜景を左手に眺めつつ、船は進んで行く。

この日の夏クルのイベント「GET BACK!!」は、普段は渋谷asiaにて毎回約600人を動員し続けている祝前日の人気パーティー。HIPHOP黄金期とも言われている2000〜2005'sに発表された、良質なHIPHOP、R&B、REGGAEのみに焦点を当てたスローバックイベントだ。


とりあえず駆けつけ一杯のアルコールを胃に流し込んだB-boyたちは、DJの流す心地良いR&Bとアルコールの酔いで、徐々に体を揺らし始めた。誰もが耳にしたことのあるメインストリームのHip hopが掛かると、セクシーなB-girlたちがはしゃぎながら体をくねらせる。


そして満を持して登場した、横浜を代表するHip hopグループ・OZROSAURUSのMC・MACCHOとDJ SN-Z。心地良いグルーブのサウンドでライブが始まり、オーディエンスの視線は一気にステージに集中。MCのMACCHOが「ヨコハマ!」と叫ぶと、会場全体が「ヨコハマ!」と応える阿吽の呼吸で、会場全体の空気が見事に一体化した。


「こんなシチュエーションでのOZROのライブはなかなかない」とMACCHO。横浜DeNAベイスターズのコラボ曲「THIS IS MY ERA.」で、オーディエンスのボルテージも最高潮に。真夏の横浜の夜の空気で、ステージとフロアが満たされてライブは幕を閉じた。


中二階デッキには備え付けのベンチでデッキの内周がぐるりと取り囲まれており、串焼き焼く香ばしい香りが真夏のお祭り気分を煽る。踊り疲れた乗船客たちは、ベンチに座って焼きそばやフランクフルトを頬張ったり、煙草をふかしながらお喋りに花を咲かせたり、思い思いにクルージングを楽しんでいた。


キラキラ輝く横浜の夜景を船上から眺めつつ、最高の音楽で体を揺らすというエクスクルーシブな2時間半のクルージングを終えて帰港する船。


夏の夜は短いが、それでもまだ時刻は22:30。「この後どこのクラブに行く?」といかにも高揚感を引きずったままの相談をしながら、名残惜しげに船を去る人々。「超楽しかった」と何度も繰り返すB-girlたちの甲高い声が印象的だった。