先月行われたヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞、アカデミーの有力候補ともされている映画「JOKER(ジョーカー)」が、公開に先駆けて異様な盛り上がりを見せているのと同時に、映画館が観客へ向けた警告が話題になっている。

映画「JOKER」は Joaquin Phoenix(ホアキン・フェニックス)が演じるバットマンの敵役・ジョーカーの人生にフォーカスした完全オリジナル・ストーリー。狂気で人々を恐怖に陥れる "ジョーカー" そのものではなく、孤独な男がジョーカーになるまでのリアルなドラマを描いている。


今週火曜日、アメリカの大手劇場チェーン Alamo Drafthoue Cinema(アラモ・ドラフトハウス・シネマ)は「JOKER」が子供向けではないことを大人に周知させるため Facebook に警告を投稿した。(Alamo Drafthouse Cinema はテキサス州オースティンで1997年に設立された劇場チェーンで、テキサス全土に21ヶ所、アメリカ全土に40ヶ所ある。)

投稿は ”This is not a joke"(これは冗談ではありません)という文章から始まる警告文は、以下のように続いている。

"Joker is rated R and for good reason. There's lots of very, very rough language, brutal violence, and overall bad vibes. It's a gritty, dark, and realistic, Taxi Driver-esque depiction of one man's descent into madness. It's not for kids, and they won't like it, anyway. (There's no Batman.)"

「JOKER」は妥当な理由で R - 指定にレートされており、非常に荒い言葉遣い、残忍な暴力、全体的に良くない雰囲気です。暗く、リアリスティックな描写は、映画「Taxi Driver」のようで、男が狂い、狂気に走っていく様を描いているからです。とにかく子供向けではないですし、子供も好きにならない映画です。(バットマンも出てきませんし。)


劇場側が保護者に向けて R - 指定の映画を子供に見せないように積極的に働きかけることは稀である。しかし法律上、保護者が同伴した場合、誰も入場を制限することはできないとのことだ。(アメリカでは NC-17に指定された映画のみが、保護者の有無にかかわらず未成年者の入場を制限することができる。)[日本では R15+ に指定されており、15歳未満の入場・鑑賞が禁止されている。
 

この珍しい忠告は「JOKER」に含まれる、警戒すべきコンテンツと現実に暴力沙汰などを引き起こす可能性を懸念して劇場側が取っている措置の一つに過ぎず、Alamo を含む多くの劇場チェーンは今週末に向けてさらに警戒を強めているようだ。AMC シアターズや Landmark Cinemas(ランドマーク・シネマズ)といった他の劇場チェーンも、上映の際ジョーカーのマスクやおもちゃの武器の持ち込みを禁止するといった対応をとっている。

アメリカ軍にも注意勧告してるようで、映画に関連した可能性のある集団射撃などが起こった場合は「走る・隠れる・戦う」ように呼びかけているようだ。

2012年に故 Heath Ledger(ヒース・レジャー)がジョーカーを務めた映画「Dark Night(ダーク・ナイト)」の上映中には、銃乱射事件(オーロラ銃乱射事件)が起きており、事件の現場となったコロラド州の都市オーロラにあるシネマーク・シアターでは今回「JOKER」は上映されないとのことだ。

日本でも、映画や漫画に影響されたとされる犯罪は過去に多数起きているため、一部ではトラブルが警戒されているようだ。


「JOKER」の劇中では様々な大物アーティストの楽曲が使用され、Frank Sinatra(フランク・シナトラ)の「My Way」、Gary Glitter(ゲイリー・グリッター)の「Rock'n Roll Part.2」、The Guess Who(ゲス・フー)の「Laughing」や、チャールズ・チャップリンが作曲して Nat King Cole(ナット・キング・コール)が最初に歌った「Smile」など、誰もが一度は聞いたことのある曲が多数使われており、ジョーカーの内面を表すために効果的に流されている点にも注目してもらいたい。