PwC の新たなデータ分析によると、グローバルライブミュージックビジネスの収益は、2020年、新型コロナウイルスの影響で64%(約180億ドル)ダウンしたとのことだ。

この報告書によると、ライブ音楽は2020年、約104億ドル(チケット販売:約80億ドル + スポンサーシップ:約21億ドル)の収益が予測されており、これは2019年の約290億ドルから大幅に減少。一方、録音された音楽によって得られた収益は約304億ドルとなり、ライブ音楽の収益はこれにはるかに及ばない数字となった。なお、ライブ音楽の収益の減少により、世界の音楽業界全体の収益は約170億ドルの減少となっている。

今年は、2000年代の大規模なレコード業界の不振以来初めて、記録された音楽(デジタルを含む)がライブ音楽よりも収益を出した年となった。新型コロナウイルス禍において、アーティストのツアーができなくったため、デジタルを含む物理的な販売が主な収入源となったためである。それは、音楽ストリーミングの継続的・強力な成長も反映している。音楽ストリーミングは、2020年には特に204億ドル相当の収益を出し、予測される複合年間成長率(CAGR)は2024年まで11.32%となっている。

録音された音楽は、ロックダウン以降にうまく稼いできた唯一のセクターではない。PcW によると、ライブ音楽、映画、劇場などの物理的な体験が不景気の影響を特に強く受けている一方で、ビデオゲームや Netflix を始めとするビデオストリーミングサービス等のインターネットでのコンテンツ配信(OTT)が、新型コロナ禍において利益を出しているとのことだ。

イギリスだけでも、OTT による収益は2020年18.6%(約16億ポンド)増加したとのことで、更にビデオゲームも9.7%増加しているとのことだ。

しかし、だからといってそれがライブ音楽にとって悪いニュースというわけではなく、2020年〜2024年に掛けての予測では、コンサートの再開に伴い、2021年にはライブ音楽が回復し、世界的な収益は82.6%の増加、約190億ドルを超えるだろうと予測されている。

イギリスの PcW のエンターテインメントおよびメディアの責任者である Mark Maitland は「対面」という形式に依存せざるを得ない他の業種についても、2021年に同様に強力な回復が見込まれると述べている。

「メディア部門の一部は、新型コロナウイルスのパンデミック、特に対面での活動や広告収入に依存する活動によって非常に大きな打撃を受けている」

「2020年のこのセクターの収益は7%減少したが、ここ数ヶ月の間にライブパフォーマンスの改善が見られたため、セクター収益は2021年に2019年レベルまで回復すると予想している」

同様に、2020年から2024年の見通しでは、2022年のコンサート業界のグローバル収益は約293億ドル(2019年より約3億ドル以上 UP)となり、チケット販売収益は2019年の約229億ドルから約233億ドルにと跳ね上がると見られている。

2020年は失われた1年となったが、PwC のアナリストは今後数年はライブ音楽の成長が一貫していると考えている。

「新型コロナウイルス大流行の結果として2020年に音楽業界が混乱したにも関わらず、グローバルなライブ音楽の収益は1.4%の CAGR で成長すると予想されているため、幅広いライブ配信の提供から得られるものはたくさんある」とレポートは述べている。

また、PwC UKは、「より多くの会場を再開することで、来年の成長率の低下からライブ音楽がすぐに回復する」とも予測している。

コンサートが開催できない期間中、ライブ音楽ビジネスが昨今のオンラインイベントや VR フェス等、ファンと繋がるためにテクノロジーをどのように採用しているかを強調し、デジタルに多様化した業界は、新型コロナウイルスの驚異の直後に立ち直るために最適な業界であると Mark Maitland は指摘している。