世界最大級のライヴ・エンタテインメント企業である AEG Presents と、その子会社でアメリカ最大級の音楽フェス「Coachella(コーチェラ)」を運営する Goldenvoice を所有する米国の持株会社 The Anschutz Corporation は、アメリカの中絶反対運動を支援する政治団体に資金提供を続けていると、ローリングストーン誌が報じている。


億万長者の Philip Anschutz 氏が所有する同社は、6月24日に連邦最高裁が「ロー対ウェイド裁判」を覆したことを受け、その1週間後に中絶禁止法の施行を約束する州知事の選出を目指す共和党弁護士協会(RAGA)に7万5,000ドル(約999万円)の寄付を行なった。
RAGA は Popular Information 社と提携し、連邦最高裁の判決と同日に支持者からの寄付を募り、次のようなメッセージを発信したとのことだ。

非常に多くの寄付が、共和党の検事総長が民主党の中絶推進政策に対抗し、生命のために堂々と立ち上がるのをサポートする。

The Anschutz Corporation は「RAGA の資金調達の勧誘については知らなかった」とローリングストーン誌に述べており、更に同社は少なくとも2014年から RAGA に寄附しているとのことだが、それについて以下のようにコメントしている。

The Anschutz Corporation または Philip Anschutz 氏による RAGA への寄付は、ローまたは中絶に関する RAGA のいかなる立場にも基づいておらず、それによる情報もなく、動機もない。アンシュッツ氏は、通常、特定の目的のために、多くの団体に木津をしている。彼は、そのような組織が取るそれぞれの立場を検討したり、支持したりすることはない。

個人的な問題として、Philip F Anschutz は、女性の選択する権利を信じており、ローの判決が覆ったことを支持していなかった。

しかしどのような意図であれ、The Anschutz Corporation の寄付は、ウィスコンシン、ミシガン、アリゾナ、オハイオ、フロリダといった州に半中絶の司法長官を設置する RAGA の取り組みに貢献することになる。

今年5月、ドブス対ジャクソン女性健康機構訴訟の意見書が流出して以来、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、Harry Styles(ハリー・スタイルズ)といった今年の Coachella に出演した少なくとも15名のアーティストがこの判決に対する意見を表明しており、更に AEG Presents はローリングストーン誌に対し、The Anschutz Corporation の寄付から距離を置くことを表明し、以下のようにコメントしている。

女性の選択する権利を断固として支持する。
地球上で最も包括的なフェスティバルや会場の多くの支持者とプロデューサーとして、我々は自分達の立場を明確にするために歩んできた。
……

我々はこれまで通り、選択、自由、女性のための完全な生殖医療の選択肢へのアクセスを約束する。

しかし、The Anschutz Corporation が右翼団体への寄付で非難を浴びるのは今回が初めてではなく、2017年にも家族研究議会、全米キリスト教財団を含む反 LGBTQIA+ 団体に寄付していると報じられていた。The Anschutz Corporation はこの主張を否定し「フェイクニュース」で「ゴミ」であるとコメント。しかし翌年、Pitchfork も The Anschutz Corporation が反 LGBTQIA+ や反移民の政治的背景を持つ小規模な団体に資金援助していることを明らかにしている。

このホールディングカンパニーとその傘下の会社が真逆の政治的主張を支持しているという矛盾は、果たして今後どのような動きを見せるのだろうか。