ラッパー/実業家の Jay-Z（ジェイ・Z/ショーン・"Jay-Z"・カーター）が、昨年自らに対して性的暴行の訴えを起こした匿名女性（Jane Doe）およびその弁護士らを提訴したことが、裁判所の文書で確認された。

Jay-Z 側は、弁護士のトニー・バズビーとデビッド・フォートニー、そして原告である Jane Doe が共謀して虚偽の告発を行ったと主張。訴状によると、彼らは Jay-Zと 音楽プロデューサーの Diddy（ショーン・“Diddy”・コムズ）が、2000年に当時13歳だった Jane Doe を薬物で昏睡させたうえで性的暴行を加えたという虚偽の主張をしたとされている。

Jane Doe は昨年10月に Diddy を相手取って最初の性的暴行訴訟を起こし、その際に「別の男性セレブリティにも暴行された」と示唆していた。彼女はその後、再び訴訟を提起し、新たに Jay-Z を加害者として名指ししたという。

Jay-Z 側の訴えによると、最初の訴訟と2回目の訴訟の間に、バズビー弁護士が Jay-Z に対して「恐喝的な要求書」を送っていたという。また、彼の名前が公にされる前に匿名での訴訟が提出され、その後、Doe  が NBC ニュースでインタビューを受けたことも「世界中に虚偽の情報を広めるための悪意のある策略だった」と主張している。
Jay-Z は 今回の提訴について、「決して軽率に訴訟を起こしたわけではない」としつつも「Jane Doe の虚偽の告発に対して責任を問うために訴えを起こした」と述べている。彼の弁護団は、Doe の主張には信憑性に疑問があるにもかかわらず、Jane Doe の代理人であるバズビーやフォートニーらは適切な調査を行わなかったとも指摘している。


一方で、バズビー弁護士は、新たな声明を発表。米音楽メディア Pitchfork の取材に対し、「Jay-Z の訴訟には法的根拠がない」と反論し、以下のように述べた。

「Jay-Z の調査員たちは、私の依頼人である Jane Doe に対し、数週間にわたり嫌がらせや脅迫を繰り返し、彼女に証言を撤回させようとした。だが彼女は一貫して自らの主張を貫いている。」

また、「Jay-Z 側の調査員が第三者に金銭を支払って、私や私の法律事務所を訴えるように仕向けていた」とも主張している。さらに、バズビー弁護士は、Jay-Z  側の訴状に記載された Jane Doe の発言について、「彼女はそんなことを言った覚えがないと話している。もしくは、Jay-Z 側が Jane Doe 本人ではない別の人物と話をしたのかもしれない」と疑問を呈した。

Jay-Z 側は、今回の提訴を「名誉毀損および悪意のある虚偽の告発に対する正当な訴訟」と位置付けており、一方で Jane Doe 側は「Jay-Z 側の嫌がらせと脅迫に負けずに戦う」と主張している。

今回の訴訟は、音楽業界における権力者と被害を訴える側の闘争という側面を持ちつつ、名誉毀損や虚偽告発の問題を巡る大きな議論を巻き起こしそうだ。