様々な場所で耳にする EDM 界の "ゴーストプロデューサー" 。タブーな話題であるが、しかし事実として存在する職業である。
ゴーストプロデューサーとはアーティストに楽曲を提供する、いわゆる影のプロデューサー。楽曲にクレジットされているプロデューサーに成り代わり、その裏で楽曲制作をしていたり、フィーチャリングとして名前は載っていないが、楽曲のクレジットには名前が載っている場合など、様々なパターンが存在する。
 
賛否両論あるこのゴーストプロデューサー業。実は有名な EDM アーティストも「ゴーストプロデューサを使用したことがある」と語っている場合もあるようだ。

そんなゴーストプロデューサーたちが所属し、様々なサービスを提供している EDM Ghost Production(イーディーエム・ゴースト・プロダクション)。この会社を運営しているロシア人ゴーストプロデューサーの Alexander Larichev にインタビューし、知られざるプロのゴーストライター業とは一体どのようなものなのか、闇に包まれたその実態を探ってみた。
 

ゴーストプロデューサーによるサービスを提供する
「EDM Ghost Production」とは?

Alexander の運営している EDM Ghost Production は、既にゴーストプロデューサーが制作した楽曲を Web 上のショップで販売するほか、音楽業界にコネクションがない新人プロデューサーに DJ やレーベル、メディアやエージェント、ソングライターなどを紹介するサービスである「Industry Contacts」や、SoundCloud 、Instagram といった SNS でのプロ―モーションの仕方を伝授する「Social Network Boost」レーベルやエージェントとの付き合い方、ファン獲得のための方法、海外進出をするための方法を伝授する「Artist Management」など、業界に関する基本的な情報を教えてくれるサービスも提供している。他にも、ダンスミュージックに特化した弁護士の紹介「EDM Lawyer」などのサービスまである。

そして、その中でも一際注目すべきなのは、やはり EDM Ghost Production に所属しているゴーストプロデューサーにオリジナルトラックを制作してもらうサービス「Custom-Made Services」。様々なパターンがあるようだが、オリジナルトラック制作のプライス799ユーロ~となっている。

EDM Ghost Production

オフィシャルホームページ:https://edm-ghost-production.com/
 
 

EDM Ghost Production 経営者兼ゴーストプロデューサー Alexander Larichev が語る「ゴーストプロデューサーのお仕事」(前編)




iFLYER:自己紹介をお願いします。

Alexander Larichev:僕の名前は Alexander Larichev、26歳。ロシアの小さな町で生まれ育った。僕はEDMプロデュサーだ。ここでちょっとはっきりさせたいんだけど、僕の言う「EDM プロデューサー」というのは、エレクトニックダンスミュージックプロデューサーという意味だ。僕はコンピューターでみんながダンスできる楽曲を制作している。だけど、ビッグルームやトラップ、フェスで流れるような世間でいうところの「EDM」だけを制作しているというわけではない。テクノやテックハウスも制作しているけど、世間ではそういったジャンルを EDM とは言わないよね。だけど、こういったテクノやテックハウスのジャンルも、EDM と同じコンピューターで制作している。だから僕は、自分自身を EDM プロデュ―サーって言う必要があると思うし、そう名乗っている。

iFLYER: いつ、どうやってゴーストプロデュース業を始めたのですか?

Alexander Larichev: 2014年、仲の良い友人に「金を支払うから楽曲を制作して欲しい」って頼まれたんだ。最初、僕はすごく戸惑ったんだけど、彼は僕に当時は僕が得意としないジャンルの楽曲制作を頼んできたんだ。それがなんだかやる気になって、スキルアップしたい、そのジャンルをもっと練習して今より良いプロデューサーになりたいって気持ちにさせてくれたんだ。だから、今迄制作した事のなかったベースラインやサウンドをそうやって制作するか研究したんだ、でもそれはとても素晴らしい挑戦になったよ。その経験に僕はすごくインスパイアされた。楽曲制作の金額は、50ドルだった。僕は承諾して、彼にその後も数曲制作したよ。

iFLYER: どうして自分自身が DJ になって、人前でプレイしないのですか?「有名になりたい」という願望はないのですか?

Alexander Larichev: そうだね。実は、僕も昔は DJ をしていた。すごく充実していたけど、あまり好きになれない部分もあった。それに、僕は有名な DJ になりたいとは思っていない。DJ の生活は、すごくかっこいいと思うけど、僕は恐らくそういった生活がうまくこなせないと自分自身で思う。飛行機に乗るのも好きじゃないしね。いつも飛行機に乗った後には、気圧や気候の違いで体調がすごく悪くなるんだよね。1日だけのこともあるけど、何週間もそういった体調不良に悩まされ続けることもある。あと、飛行機に乗るのは怖いしね。更に、様々な国に行って時差があったりするし、DJでいると時間が経つのが一般の人たちよりとても早く感じると思う。だから、各国のステージを行ったり来たりするより、僕にとってはスタジオで音楽を制作しているほうがずっと心地良いんだ。シンセサイザーをいじったり、友達のプロデューサーと楽曲や楽曲制作について話したりしてね。それに今は Skype があるから、いつでもみんなと話せる。こういった生活の方が平和だし、性に合っている。人生を生き急ぎたくないんでね。

iFLYER:1つ前の質問と被りますが、どうして自分が制作した楽曲を自分の名前でリリースしないのですか?

Alexander Larichev:うーん、そうだね。実は、自分でも自分が何者なのかわからない部分もある。とてつもない数の様々なジャンルの楽曲を制作しているからね。「アーティスト」と言っても、僕はトランスアーティストではないし、フューチャーハウスアーティストでもない。僕はどんなジャンルやスタイルの楽曲でも制作できるけど、逆にどこにも属しない感じがする。だから僕は自分の楽曲を自分でリリースしない。もし楽曲をリリースするなら、自分自身をブランディングしてリリースしなければならないからね。サウンドに独自の特徴付けをして、自分をプロモートしなければならない。そういったことにはとても時間が掛かるし、難しいことだと思う。
恐らく僕は今、自分が何が1番好きで、自分がやりたいことは何なのかを探している最中なのかもしれない。でも、実は毎年1曲、自分の名義でリリースしているんだよね。まあでも、それは「ただ楽しいから」って理由でだけど。

iFLYER:ゴーストプロデューサーをやっていて1番楽しいことは何ですか?

Alexander Larichev: 1番楽しい事は、仕事がいつも違うし同じことをするって事が一度もないって事かな。いつも新しくてユニークな何かを制作している。それってすごくクリエイティブでインスパイアされるよね。自分の大好きな趣味で人生を生きれるってすごく素晴らしい事だよ。だからこういった事が出来てすごく僕は恵まれているよ。それから、毎日新しい技術やトリックを学べるのもクールだよね、毎日新しい何かを学んでいる。特に素晴らしいプロデューサーや、ソングライターやボーカル、様々なミュージシャンが関わる大きなプロジェクトは本当に色んな事をそこから学んでいるよ。

iFLYER:逆に、ゴーストプロデューサーをやっていて1番大変だったことは?

Alexander Larichev:楽曲制作を頼んできたクライアントから、10回以上も修正が入ったときかな……。そうゆうときは、もう一生楽曲が完成しないんじゃないかと思うよ……。

インタビュー後編に続く! 
 


EDM Ghost Production

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