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Ⓒ Masanori Naruse

FUJI ROCK FESTIVAL 2016だけでなく、東京での単独公演も実施したKill The Noise。SkrillexなどのTOPアーティストと交友が深く、多くのEPをリリースしてきたOWSLAを代表するアーティストの一人。

今回、iFLYERは、Kill The Noiseとの単独インタビューを実施!デビューアルバムとなった『Occult Classic』について色々聞いてみました!彼の音楽観に迫るインタビューをぜひチェックしてください。
 

今回のデビューアルバム『Ocult Classic』のリリースおめでとうございます。
まず、今までEPを中心にリリースしてきた中で、どのようなプロセスを経て、デビューアルバムのリリースを決めたのですか?

今回のアルバムって実は、EPとしてのリリースを構想として始まったんだ。だから、最初は、アイデアが浮かんだらデモをとにかく作って、それをまとめてたりしていたよ。でも、ある時から、そのデモが関連性のあるように感じてきて、その時に、今回のプロジェクトはEP以上のものになると感じたんだ。

また私のキャリアを見た時にも、今回はアルバムで発表しようと思ったんだ。僕は、ここ3年間で3つのEPをリリースしたんだけど、少ないと思っているファンもいるんじゃないかな?ってね。EPだけをリリースしていたら、どんどん反応は薄くなるからね。だから、今回の発表もリリース日が近づいていたときに、「デビューアルバムをリリース!」と発表したんだ。

実際に、ファンの反応も良くて、みんなデビューアルバムを出す事にびっくりしていたよ。

クリエイティブなどの様々な視点から誕生したアルバムであったんですね。

そうだね。実際ツアー中に浮かんだちょっとしたアイデアに基づいた楽曲もあるよ。そういったインスピレーションの種のようなアイデアが発展して楽曲の完成に至ったよ。これは、いわゆる8:2の論理に基づくところかな。いわゆる8割はアイデア、勢いで完成までもっていっても、残りの2割が一年以上かかるんだよね。その2割とは、いわゆるエンジニアリングのミクシングやヴォーカルのレコードをする部分。でも、それらのプロセスは長い時間がかかる分、学べることは多い。レコーディングというのは、Slow Roast Recordsでも経験してきたことだけれど、それ以上のことも学べたよ。

最後のチューニングまでをすべて自分でやったってことなんですね。素晴らしいです。ちなみに、なぜ今回のアルバムをOWSLAよりリリースしようと決めたんですか?また、OWSLAと一緒に仕事をしてどうでしたか?

そうだね。そもそも、自分が共同経営するレーベルSlow Roast Recordsの起源から話したほうが、そのプロセスが分かりやすいかな。

このレーベルの起源は、2008年に、当初、マイアミで活躍していた長年の友人DJ Crazeと一緒に、自分たちの楽曲を配信するアウトレットがない?じゃあ、自分たちでアウトレットを作ろうっていう事で立ち上げたんだ。その頃は、まだOWSLAが存在していなかったからね。



実はレーベルを立ち上げる際には、Fools Gold Recordsを設立したA-Trakが手伝ってくれたんだ。そして、エレクトロハウスやハウスのような楽曲を制作しているうちにSkrillexと出会ったの。彼は僕の音楽がエレクトロハウスやハウスからアグレシッブなDubstepへと展開すること(新しいサウンド)に、とても期待をかけてくれてて、OWSLAに対する大きなビジョンを持っていた彼と仕事をすることになった。またOWSLAからリリースすることにより、Slow Roast Recordsのプラットフォーム作りにもなれたら良いなとも思ってた。

OWSLAとSlow Roast Recordsという二つの世界の中で今回のアルバムを発表できたことを本当に嬉しく思う。

今年に入ってからも、小さい企画をSlow Roast Recordsにも出しているけれど、インフラとビジュアルの強さで比べてしまうと、ブランドとしてOWSLAのほうが圧倒的に強いんだよね。リリースするという意味合では、僕がリリースするよりOWSLAにリリースしてもらったほうが、時間的にも短縮できた。その空いた時間で僕は、新たな楽曲制作やほかの有意義なこと、次へと繋げるためのステップとして時間を使えたんだ。
 

僕は、Slow Roast Recordsをレーベルよりかは、自分たちの情熱的な企画ができる場所のように捉えている。だから、例えばOWSLAのフィーリングに合わないようなものは、Slow Roast Reocordsよりリリースしたりして、もちろん楽曲を制作している友達(プロデューサー)のトラックも配信し、サポートしているよ。

今回のアルバムの中では特に印象的なのが、色々な音を探求して組み合わせていること。このような音の組み合わせは、どんなアイデアだったのですか?

僕は、さっきアルバム発表のきっかけを話した時に、EPの限界というものを感じていた。EPには、6-7曲しか平均的に収録されないから、語る世界が限定されてしまう。それは、ある意味、現代人の集中力がどんどん短くなっていることを反映しているのかもしれない。それだけ聞き手は、すべてのものを圧縮したものをほしがっていると思う。

だから、今回のアルバムも自分の様々なアイデアを実践し、どれだけ凝縮できるかというチャレンジ的な課題としても捉えていたんだ。僕がヴォーカル寄りでメロディックな楽曲を制作できるか?という自分へのチャレンジでもあったし、僕の音楽を最初から聞いてくれているファンが自分の新しいサウンドを受け入れてくれるかという期待もあった。実際に、ここ数年でメロディックやヴォーカル中心といった独自のサウンドからかけ離れていた音楽を制作していたけれど、それを公開することは無かったからね。今回のアルバムは、その線を超えるためのチャレンジであったのかもしれない。

もちろん、僕の一部のファンには、Kill The Noise特有のとにかくクレイジーなハードコアを好むサポーターがいる。今回のアルバムでも、そのようなファンに応えるような楽曲も収録した。
 


でも、僕自身の好きなレコードは、インディーロック、ヒップホップ、そして、エレクトロニックミュージックなど様々なジャンルからくるもの。

でも、僕の好きなレコードってジャンル関係なしに共通して言えるのは、いつでもその楽曲を聞きたいと思い、何か冒険にでたような気分を味わわせてくれる作品である事。そして、自分もチャレンジしてみようって気分にさせてくれるものが多いかな。

例えば、一番最初にアルバムを聴いた時は、あまり好きで無い曲って数曲ある、このアルバムの6曲目と7曲目が好きだけど、聴いているうちに、急に3曲目も好きってなる事があるんだよね。最初嫌いだった曲もアルバムを聴いている内に好きになるまでどんどん成長する、ポテンシャルを秘めた楽曲ってあると思うんだよね。

このような気持ちになったのは、僕の大好きなバンドでもあるRadioheadNine Inch Nails。彼らの音楽って毎回自分たちがチャレンジしているように聴こえるんだよね。リリースされる度に、新たな音の領域を探検したり、ヴォーカル面でも力を入れて、常にフレッシュな音を届けてくれる。

僕は、彼らを15歳のころから聴いてるから、そういったアーティストは、僕のアイデンティティや人生の一部にまでなっている。それほどの大きな影響力を持つんだ。

いつかは、彼らのような偉業を成し遂げたいと思ってる。可能かどうかはわからないけれど、そのくらい高い目標を掲げているよ。

でも一番重要なのは、自分のために音楽を制作することだと思う。音楽に対する情熱を楽曲にしないと、観客にも届かないと思うから。それが僕のセオリー。
Radioheadの元メンバーThom Yorkeは、特に「The Eraser」のソロアルバムで、とにかく自分の領域を広めた、音楽的に自分のモチベーションを上げる新しいことに挑戦している。

それは、楽曲の細部にまで言えることだよ。特に、Radioheadに関しては、小さな頃から聴いていたバンドだから、大人になって聴いた同じ曲でも、初めて聴く音があったり、新たな意味合いを歌詞や音楽から感じることが出来る。同じ曲でも、人々が時間とともに、違う意味で好きになれる楽曲って本当に素敵だと思う。

ちなみに収録曲の「Without A Trace」は、どのような経緯で完成したのですか?

その楽曲には、Stalking Gia(本名Tiffany)っていう女の子が関わっている。「Without A Trace」のコアプログレッションとラフな構成を完成させたときに、彼女と会ったんだ。音楽関係者のChris Morrisが、僕と彼女をOWSLAのイベントを通じて会う機会を設けてくれたんだ。会う前から、彼女のデモとかは聴いていて、本当に素敵な歌声を持つアーティストだと感じていた。そして、実際に会ったら、性格も良い子で音楽の話も波長が合った。一緒に楽曲制作をしていると、彼女は、リリックのないヴォーカルメロディーを完成させてくれたて、これがきっかけになって自分がリリックを書いてみようと思ったんだ。彼女に自分が書いたものを一回歌ってみないか提案してみた。
 

そのリリックとは、純粋に自分の人生を反映しているもので、このリリックを書いているときも、頭の中ではNine Inch NailsやRadioheadの事を意識してた。彼らの曲って、出来るだけあいまいな意味合いを楽曲に持たせる。これにより、聴く人は、自分たちなりの意味をその曲に投影し、自分と関連づけすることが出来る。今回のリリックで僕が発信しようとしたメッセージは、すごくシンプルなことで、

いわゆる励ましのようであり、辛いときもあるけれど、そんな時こそ、周りのサポートに感謝し、強い信念で乗り越えよう!ってメッセージ

そのようなリリックとデモの様々なプロセスを通して、本当に素敵な作品が出来上がりましたね。

実は、あの曲も、様々なプロダクションスタイルやテンポを試したから、沢山のデモやバージョンがあったよ。音楽作りでは、Porter Robinsonの『Worlds』ってアルバムにも大きな影響を受けている。とくに、彼がNeroの楽曲をリミックスした曲は、とくにお気に入り。
彼のアルバムは大好きだから、ついつい聴いてしまうけれど、あまり聴きすぎると、そのスタイルが自分の作品へと移ってしまう危険性があるから、あくまでもインスピレーションの源としているよ。

Porter Robinsonとは、実際に交流はあるんですか?

もちろん!実は、僕らは、ほぼ同時期にOWSLAと契約をしたんだよ。僕は、彼が2011年頃に、OWSLAより初めてリリースしたEP「Spitfire」の楽曲をリミックスしたんだ。だから普段から話すし、彼は本当に期待を裏切らない音楽制作をしているから、今後のリリース素材にも注目だよ!
 

今回のアルバムでは、「Dolphins On Wheels」をDillon FrancisとのサイドプロジェクトMeowski 666として収録されましたね!Dillon Francisとの交流は、何をきっかけに?そして、今回の楽曲は、何をきっかけに、イルカ=Dolphinに注目したんですか?

Dillon FrancisがロサンゼルスのThe Shrineでショーをしていたときに思いついたんだ。彼がCDJかサンプラーか覚えていないけれど、何かしらの機械でコンスタントに、イルカの音を再生していたの。

そのときに、なぜ誰もイルカの楽曲を制作していないのかって気づいたの!(笑)

朝、家に帰って即イルカの音を題材としたラフなデモを送ったの。そしたらDillon Francisの反応が、「これ最髙じゃん!良い意味で最強にバカ、クレイジー!」僕も同感で「Dolphins On Wheels」が誕生したんだ。
 

イルカってフライヤーのモチーフになったり、ファッションのステートメントになるにもかかわらず、あまり楽曲のモチーフにならないことを疑問に思っていて、絶好のチャンスだと思ったきっかけの一つ。彼がヴォーカルをレコードしたり、2人で一緒に制作してすぐ完成した楽曲だよ。



実は、曲中に、子どもの声もレコードされているんだけど、実はあれって、Skrillexのマネージャーのお子さんの声なんだよ。色んな音楽友達を通して完成したジョークのような作品になったよ。

でも、そのコミカルな一面、重要なメッセージも隠されている。

それは、楽しんでいることは、音楽にも表現されるということ。それを聴いている人にもわかると思うんだよね。

例えば、Dillon Francisの曲って聴いていると、作ってる本人も絶対楽しんでるだろうなって思う。そんなヴァイブズっていうのは、ダンスミュージックにとって最髙だと思うんだよね。

ちなみに、そういったな部分に関しては、「All In My Head」は歌詞が興味深かったです。あの楽曲のエピソードとは?

実は、僕には年下の弟がいて、僕はロサンゼルス、彼はニューヨークを拠点にしている、一ヶ月に何回か電話を通して、お互いの近況報告をしているの。そこで電話の会話を録音できるアプリがあって、そのアプリを使って音楽制作が出来ないかなって思いついて楽曲にしたんだ。
 


今回のアルバムの根底にあるテーマって「エレクトロニックミュージックがここ数年で遂げた偉大な成長」なんだよね。僕の友人でさえ、ポップ界とのコラボを通して、とんでもないビッグスターへと成長している。僕は、あくまでもインディーを軸としているから、僕が一番伝えたかったメッセージは、

自分が成し遂げたい目標や夢のために何をしているか、純粋に自分のやっていることを楽しみ、自分がそれで成し遂げたことに満足し感謝し、自分の好きなことを続けろということ。
たとえ、自分の好きな音楽を制作している中で、お金を稼げなかったとしても、音楽を制作できていることに、感謝すべきだと思う。だって、世の中には、音楽を制作したくても、音楽を制作できる余裕や環境が無かったり。様々な理由で音楽を制作できない人もいる。

音楽を制作するだけでなく、仕事として実行できることに感謝している。

音楽を作っている多くの人々、とくに若者は、クリエイティビティに劣っていたり、思うように行かなかったりでイライラすることもあると思うんだよね。だから、僕は彼らに言いたい「リラックスして!音楽界でのスターになろうと自分を苦しめるな!音楽制作を純粋な気持ちで楽しく取り組めば、良いことは絶対に起こる」と。僕の場合は、楽しく生きて行ければそれで十分。

では、実際に、弟の会話をサウンドバイトとして使用されたんですか?

そうだよ!弟と話す僕の会話のまんまだよ!でも、ヴォーカルは、AwolnationのAaron Brunoとのセッションでお願いしたんだ。実は、楽曲自体は、リリックより前には完成してたんだけど、弟の録音会話を聴き返していたときに、フィーリングやエモーションが音楽の波長的にも合致したと感じたんだ。Aaron本人も大変気に入ってくれたよ。

短時間のスケジュールにも関わらず、ディープな内容でデビューアルバムについて話してくれたKill The Noise。
今回のインタビューでわかった楽曲のエピソードや彼の音楽に対しての思いを知ってから、もう一度アルバムを聴いてみよう。また変わった見方になるかもしれない。
 


彼のデビューアルバムを是非チェックしよう。

 

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