最早、東京(千葉)の夏の恒例行事となりつつある夏フェス「SONICMANIA」「SUMMER SONIC」が、今年も8月17日(金)〜19日(日)に掛けて開催された。都心からも近く、交通の便も良いこの両フェスには、毎年豪華な海外アーティストと要注目の国内アーティストたちがラインナップされている。
今年も例に漏れずに素晴らしいアーティストの面々がステージに立ち、どのステージも大盛況となった。


まず、SONICMANIA で最も注目を集めていたのは、やはり FLYING LOTUS(フライング・ロータス)のステージだった。今年の SONICMANIA では、FLYING LOTUS が主宰するレーベル  Brainfeeder のステージが登場し、彼の他にも Thundercat(サンダーキャット)を始めとする豪華アーティストがステージを飾った。


FLYING LOTUS は2014年以来4年ぶりの来日となり、以前は『Hyper Cube』で観客を驚かせたが、今回は前回とはまた大きく違った最新の3Dライブということで、観客の期待は大きかったようだ。彼の出演時間には3Dメガネの配布は予定数を終了しており、メガネなしで鑑賞している方も多かった。「Zodiac Shit」も3Dバージョンで披露され、音楽とともに視覚から入ってくる立体的な映像が更なる音への没入感を誘う。

FLYING LOTUS は、自身の曲以外にも様々な曲をプレイ。アニメ映画 Ghost in the shell/攻殻機動隊の『Making of Cyborg』がプレイされたときの歓声はその日一番と言っても過言ではないほどだった。最後に Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とのコラボ曲「Never Catch Me」をプレイ。さすがは多数のバケモノ級の超絶技巧とセンスを兼ね揃えたアーティスト揃いの Brainfeeder の主宰であると関心させるようなステージングで、誰もが満足できるこの日最高の一時だったのではないだろうか。


更に、SONICMANIA もう一つの目玉が、日本初の開催となった世界最強の PARTY『elrow(エルロウ)』ステージの存在だった。世代を問わず、幅広いテクノミュージックファンが集った elrow ステージは、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのようなキュートで奇妙でサイケデリックな、とにかくド派手なデコレーションのフロアとなり、来場者を驚かせた。


そのフロアを埋め尽くす勢いの大量の紙吹雪が舞い上がり、ウォークアバウトたちが観客に混じって一緒に踊りまくる。


最後に出演者、スタッフが一列になって観客の前に並ぶと、いつまでも止まない拍手がフロアに鳴り響いた。


一夜明けて、いよいよ SUMMER SONIC Day1 がスタート。

この日最高のライブを観せてくれたのは、Tame Impala(テーム・インパラ)だった。2009年以来2度目の出演となったオーストラリア・パース出身の5人組サイケデリック・ロックバンドのステージには、ライブが始まる前から沢山のオーディエンスが集まっていた。彼らを見るためだけに SUMMER SONIC へと足を運んだ、という方も少なくはなかったことだろう。


Tame Impala の最近のライブではお馴染みとなっている、緑色のライトがグルグルと周りそのライトがサイケデリックな模様を描く演出の中、「Nangs」のイントロとともにメンバーが登場。畳み掛けるように「Let It Happen」「The Moment」「Mind Mischief」「Sestri Levante」が披露された。新旧の曲が織り交ぜられたライブとなり、Kevin Parker(ケヴィン・パーカー)が「Mind Mischief」で1人で演奏した際には、まるで彼に後光が差しているようで神々しさすら感じられた。


Tame Impala のステージでは、彼らの紡ぎ出す音もさることながら、ステージ上の色使いも非常に重要な演出の鍵となっている。「Elephant」ではステージもレーザーも赤一色に染められ、「Eventually」ではレーザーが数え切れないほど無数に照射されて、辺りはレインボーカラーに。サイケデリックな色彩の渦と浮遊感のあるサウンドがオーディエンスをズブズブと飲み込んでいく。


「Apocalypse Dreams」で見せた最後のブレイクからの合奏はとにかく最高の一言に尽きる。ロックンロールの新しい姿を追求して、まさにそれを体現しているような説得力のあるステージだった。


3日間のフェスの最終日、SUMMER SONIC​Day2 も多数のアーティストたちが素晴らしいライブを観せてくれた。

ロンドン出身の弱冠20歳のアレックス・オコナー によるソロ・プロジェクト、 REX ORANGE COUNTY(レックス・オレンジ・カウンティー)は、彼のファンだと公言する Tyler the Creator(タイラー・ザ・クリエイター)も自身のアルバムに彼を参加させるなどしており、近年注目のシンガソングライターだ。
大きな桃のイラストをバックに演奏した彼は、一度聞いたら思わず口ずさんでしまいそうになるキャッチーなメロディーで観客を魅了。前列には彼の女性ファンが集まり、終始黄色い声援が絶えなかった。


HIP HOPファンなら誰しもが待望していた Chance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)の初来日。『Coloring Book』ではグラミーで3部門も獲得し、名実ともにトップアーティストの彼は、オーディエンスの大歓声で登場した。スタートは『Coloring Book』から「Mixtape」「Blessings」「Angels」。その後先月リリースされた新曲の「Work Out」などを挟み、次いでゲストの Reeseynem(リーシーネム)が登場。MVをバックに2人でステージを走り回った。


DJ Khaled(DJキャレド)の「I’m the One 」、Kanye West(カニエ・ウエスト)の「Ultralight Beam」と自身が参加した曲を披露し、『Acid Rap』から「Favorite Song」「Cocoa Butter Kisses」を演奏。時折MCで見せる屈託のない笑顔は、クールで強面なイメージのラッパーが多い中、それとは180度真逆の明るくポジティブなオーラを放っていて、世界中のオーディエンスが夢中になるのが理解できる。


バックに映し出された太陽から「All We Got」に。歌詞の「Music Is All We Got」は彼だからこそ意味に説得力があり、壮大なゴスペル調の楽曲がオーディエンスの胸を熱くした。Chance The Rapper の代表曲である「No Problem」で更に会場をヒートアップさせ、「Summer Friends」では夏の切なさを表現しているようだった。


そして、ステージに腰掛けた Chance The Rapper が「Same Drugs」のイントロに合わせピアノを引いているかのように手を動かしながら歌い始め、それに呼応するようにオーディエンスの大合唱が。ラストに披露された、音楽への愛に溢れているかのような「Blessing(Reprise)」は、彼のセットの締め括りにふさわしい曲となった。コーラスのハーモニーと相まって、嫌なことをすべて忘れさせてくれるような、ハッピーな雰囲気を作り出していた。


2日目の大トリを飾った BECK(ベック)は2001年以来となる17年ぶりの出演で、キラキラ光ったジャケットで登場。全体を通して新旧織り交ぜたセットでファンたちを喜ばせた。「Wow」などの新曲を時折はさみつつ、「Devils Haircut」「Loser」「The New Pollution」「Mixed Business」「Think I'm in Love」などを披露し、完璧な音作りと演奏で観客を魅了した。名曲「Sexx Laws」ではオーディエンスたちが口ずさみながら楽しげに踊っていた。


BECK は時折ギターを置いて歌のみのライブを披露し、縦横無尽にステージを歩き回り、彼自身もライブを非常に楽しんでいる様子が伝わってきた。「Up All Night」ではその日 RAINBOW STAGE に出演していた DAOKO をゲストボーカルに迎え、二人が寄り添いながら歌う姿が印象的だった。
各メンバーのソロ回しを披露した後の「Where It’s At」は、大人の雰囲気溢れる仕上がりに。この曲の終わりと同時に SSUMMER SONIC 2018 の閉幕を告げる花火が打ち上げられ、惜しまれつつも全てのライブが終了した。


2019年には一体どんなアーティストが SUMMER SONIC を盛り上げてくれるのだろうか。来年の夏を楽しみに待ちたい。