これまで、保証やキャンセル料についてはアーティストとプロモーターとの間で常に暗黙の了解があり、何十年もの間均衡がとれていたが、新型コロナウイルスによる打撃を音楽業界が受けたせいで、現状ではそれが崩れてしまっているようだ。

2021年のショーの再開に伴い、北米最大のライブイベント会社である Live Nation(ライブネーション)が、ショーの経済的な負担をアーティストにも負わせようとしている、と Rolling Stone(ローリングストーン)が報道している。

Rolling Stone によると、Rolling Stone が入手したメモでは、Live Nation は支払いのポリシーを調整する理由として「前例のない時代」と「特定のコストの急激な上昇」を挙げているとのことだ。


Live Nation はチケットの売行きが不十分でコンサートがキャンセルされた場合、これまでプロモーターがアーティストに100%の金額を保証して支払ってきたのに対して、たった25%の金額しか保証されなくなり、更に、アーティストが規約違反でパフォーマンスをキャンセルした場合、アーティストは料金の2倍をプロモーターに支払うこととなる。
これには、Billbord も「音楽業界、ライブシーンでは前例のないペナルティ」であると指摘しているようだ。

変更点については以下となる

・アーティスト保証
アーティスト保証は、2020年のレベルから20%下方調整される。

・チケット価格
チケット価格はプロモーターが独自の裁量で設定し、変更される場合がある。

・支払い条件
契約の締結及びマーケティング責任の履行の条件として、アーティストはフェスティバルの1ヶ月前に10%のデポジットを受け取る、残額かkら、税金及び製造コストの標準控除額を差し引いた額が、公演後に支払われる。

・最小限のマーケティング要件
全てのアーティストは、アーティストオファーに記載されている最小限のソーシャルメディア投稿要件を通じて、フェスティバルのマーケティングを支援する必要がある。

・ストリーミング要件
全てのアーティストは、ライブビデオ放送、ライブウェブキャスト、オンデマンドストリーミング、ライブ衛星ラジオ放送で使用するために、フェスティバルでパフォーマンスを撮影できるようにする必要がある。

・請求
「フェスティバル請求」に関する全ての決定は、プロモーターの独自の裁量によるものとなる。

・商品
購入者はアーティスト商品の売上の30%を保持し、フェスティバルの2週間以内にアーティストに70%を支払う。

・航空運賃と宿泊施設
これらの費用はアーティストの負担とする。

・スポンサーシップ
プロモーターは、フェスティバルでの全てのスポンサーシップを制限なしに制御する。アーティストは、ステージ上またはそのプロダクションでブランドを宣伝することはできない。

・Radius Clause
フェスティバルの事前の書面による許可なしに Radius Clause(出演日前のいつ〜いつまでは、その地域では他のイベントに出演しない、という契約)の条項に違反すると、フェスティバルの独自の裁量により、アーティスト料金の割引またはイベントからのアーティストの削除が発生し、イベント前のデポジットはフェスティバルに返金される。

・保険
天候や不可抗力によりフェスティバルがキャンセルされた場合、プロモーターはアーティスト料金の責任を負わないため、アーティストは独自のキャンセル法顕を維持する必要がある。

・アーティストによるキャンセル
アーティストが契約に違反してパフォーマンスをキャンセルした場合、アーティストはアーティストの料金の2倍の料金をプロモーターに支払う。

・販売不良によるキャンセル
チケットの売り上げが悪いためにショーがキャンセルされた場合、アーティストは保証の25%を受け取る。

・不可抗力
Covid-19 に似たパンデミックを含む不可抗力のイベントによりアーティストのパフォーマンスがキャンセルされた場合、プロモーターはアーティストに料金を支払わない。アーティストは、そのパフォーマンスのキャンセル保険を取得する責任がある。

・会場の全容量を使用できない
会場または政府機関の注文により、プロモーターが会場の全容量を使用することが許可されていない場合、プロモーターは契約を終了することができ、アーティストは以前に支払われた金額を全て返金する。

上記の変更点を見ると、アーティスト側に対する負担がかなり増えているように見える。アーティストはそれぞれがきちんと保険に入り、何事かが起きた際には自らが動かなければならくなることが増えそうだ。

昨日お伝えした通り、一部のアーティストたちの年間所得はとんでもない金額となっているため、そういったアーティストたちであれば(損になるとはいえ)あまり問題はなさそうだが、駆け出しのアーティストの中には、こういった条件の変更により、財政状況がかなり厳しくなってしまうアーティストも今後、出てくるかもしれない……。