Mon, 30 Oct 2023
The 1975が何者であれ、彼らは魅惑の輝きを放っている。
ではThe 1975とは、正確なところ一体何なのだろうか? マンチェスター出身の謎めいたこの4人組。陰鬱なアート・ロックと、冷ややかなエレクトロニカ、ダンスフロア系R&Bに、キンキンしたヒップホップ、微かな光の揺らめくバラードや、80年代風のベタなポップとの間を縦横無尽に行き来する彼らの音楽に、評論家達は当惑し、戸惑いながらも心奪われ、純粋に胸を躍らせてきた。彼らは、フェニックスや、ザ・ストリーツ、TLC、ジョイ・ディヴィジョン、ザ・ナショナル、Alt-J、M83、インターポール、ビッフィ・クライロ、そしてピーター・ガブリエルを髣髴とさせるのと同じくらい、エヴリシング・エヴリシングにも通じるものがある。そこで私達に提示されるのは、多彩なジャンルを呑み込みつつ硬直した定義を許さない、多様なアイディアや影響源の坩堝である。
「分かりづらいことをやってるとは思ってないんだ」と自分達のバンドについて語るのは、熱さと謎めいた雰囲気とが同居する、ヴォーカルのマット・ヒーリー(Matt Healy)。このバンドはこれまでに、ヒュー・スティーヴンスやゼイン・ローといったBBCレディオ1の名物DJ達から賛辞を得てきた。「アイデンティティの欠落感や、自分が何になりたいかを本当の意味で理解するための自分探し。多くの人々が共感し合えるのは、そういったことなんだ。でも世の中の人は、既知の何かに当てはめらるものや予定調和が好きなんだよ。その方がすべてがずっと簡単にいくからね。だから何かそれに楯突くものが現れた時、人はちょっとイラっとして、『お前は自分が何者になりたいのか、ちっとも分かっちゃいない。一体何をやってるんだ? そんなことはよせ』って言ってくる。で、僕らは『こっちはちゃんと分かってるよ。ただ単に、バンドとはどうあるべきものかとか、バンドが演奏する音楽はどんな音であるべきかとかっていう、そっちの固定観念に当てはまってないだけの話だろ』って答えるんだ。世の中の人達が音楽に関して沢山のルールを求めてるのは、すごく不思議だよ」。
The 1975とは何なのか。この数年で、マットにはそれが分かるようになった。現代に生きる若者達の欲望、酒やクスリへの依存、そし... More Biography