THE CONVERSATION が、新型コロナウイルスのパンデミックにより、人々の「時間に対する認識」が変化しているとの研究結果を発表した。

緊急事態宣言が発令され、自宅にいなければならなかった時期を覚えているだろうか? それは昨日のことのように感じられるか、それとも数年前のことのように感じられるかという感じ方は人それぞれだが、一方で時間は正確で一定のものである。

私たちの感情状態は「時間の認識」に大きな役割を果たしている傾向があるとのことだ。様々な研究結果を見ると、ネガティブな感情状態のときと比較して、ポジティブな感情状態のときの方が、時間が早く流れているように感じられるとのことだ。

The National Science Foundation の 研究者 Philip Gable 氏と彼のチームは、パンデミックの最中のアメリカ国民の感情、認識、行動を月毎に記録するスマホのアプリを開発し、人々の体内時計がどのようにして狂っていったのかとその理由を調査・追跡した。
 

コロナ禍の生活の中で、我々の時間に対する体感速度は変化していた


私たちの多くがパンデミック初期に感じたのは、恐らく「これは逃げることのできない状況」だということ。逃げなければ……という強迫観念に駆られたものの、逃げ道がないと感じ、潜在的に有害であるものを避けようと試みた。その中には、私たちが常に行っているルーティーンである買い物やエクササイズなどがあった。

今年4月、研究者は1,000人のアメリカ人に「3月の時間の流れ」をアプリを使用して尋ねたところ、約50%の人々が「時間が過ぎるのが遅い」と回答し、約25%は「時間が過ぎるのがいつもより早い」と回答、残りは「時間の流れに変化はない」と回答した。

時間が早いか遅いかを感じるのは人々の感情と密接に関係している。「時間が過ぎるのが遅い」と感じた人々は最もストレスや不安を感じていた。だが一方「時間が過ぎるのが早い」と回答した人々は、幸せを感じていたとのことである。

この研究結果によると「時間が過ぎるのが遅い」と回答した人々の中には、ソーシャルディスタンスを遵守し、常にソーシャルディスタンスを行動に取り入れている人々が多かったそうだ。また同時に、不安を感じたり、不快な気持ちを感じていたことは確かだが、このソーシャルディスタンスは結果的には社会的に良い効果をもたらした。


そして4月になり「時間が過ぎるのが遅い」と3月に回答した人々の全体の約10%が「時間が過ぎるのが早い」と言う認識に変わったそうだ。より多くの人々がリラックスし、落ち着いていると感じていた。

そのため「ポジティブな気分」「時間の過ぎるのが早い」と回答する人ほど、ソーシャルディスタンスを自発的に行っていても、現在は3月にソーシャルディスタンスを取っていた時のように不安を感じることなくソーシャルディスタンスを取っている可能性が高いとの研究結果だそうだ。

しかし一方で、まだまだ多くの人々が「時間が過ぎるのが遅い」と感じているかもしれないが、それは打破することは可能であるという。
エクササイズをしたり、趣味に没頭したり、またルーティーンを作ることで時間に対する感覚は変わるとのことだ。
「時間が経つのが早い」とまではいかないかもしれないが、気分が少し向上する程度の体感速度に時間の感覚を修正でいる可能性はあるとのことだ。